2009年に『White on Rice』で在米日本人を笑いに包んだデイブ・ボイル監督の最新映画『Man From Reno―リノから来た男―』が今月末に北米で封切られる。ロサンゼルス映画際でグランプリを受賞した本作は、ヒロインを藤谷文子さんが、謎の男アキラを北村一輝さんが演じる極上のミステリー。公開に先駆け、デイブ・ボイル監督と藤谷文子さんにインタビューを行った。
《監督、デイブ・ボイルさん》
―2006年、2カ国言語コメディー『ビッグ・ドリームズ・リトル東京』で長編映画デビューをされていますね。今回の作品も日本が関わっていますが日本に興味を持ったきっかけ、魅力を教えてください。
19歳の時、モルモン教の宣教師としてオーストラリアに2年間滞在しました。その時、日本人コミュニティーでボラティア活動をして、日本語を習得しました。この経験を通して日本の文化に興味を持ち、大学で日本語を専攻しました。なぜこんなに日本の文化が好きなのかは自分でも分からないのですが、大好きです!
―この物語を制作しようと思ったきっかけ、また影響を受けたものはありますか?
きっかけは、米国と日本のミステリー小説をミックスしてみたいなと思ったからです。子どものときからミステリー小説が大好きで、いつかミステリー映画を作りたいと思っていました。米国の作家はレイモンド・チャンドラーに影響を受けています。また、日本人では松本清張が好きです。
―気に入っているシーンはどの場面でしょうか?
冒頭の霧のシーンは撮影に一番苦労したのですが、個人的にもっとも気に入っています。
―最初に脚本すべてを英語で執筆し、その後脚本を知り合いに翻訳依頼した。ということですが、どれくらいの時間を要したのでしょうか。
英語の脚本に半年以上かかり、日本語訳にさらに半年くらいかかりました。撮影に入ってからも、藤谷さんと北村さんと相談しながら、日本語のセリフがさらに良くなるように変えていきました。
―ヒロイン役の藤谷さんの魅力を教えてください。
藤谷さんは、女優としてミステリアスで独特の雰囲気を持っています。その雰囲気は、アキというキャラクターに適していると思いました。それに、女優だけでなく、作家としても活動されていますので、作家の役にピッタリだと…。監督として僕が一番嫌うのが、大げさな芝居です。藤谷さんはそれを全然しないので、すごく仕事がやりやすいです。
―多くの人に作品を観てもらった後で、感じたことはありましたか?
観客のリアクションが良かったので、とても嬉しかったです。もっと多くの人に観てもらいたい!と感じました。
―では最後に、バイ・デイリーサン・NYの読者へメッセージをお願いします。
ぜひ、『Man from Reno』を劇場で観て下さい! 今までに見たことのないミステリー作品だと思いますので、絶対に楽しんでもらえることを約束します!
《主演、藤谷文子さん》
―まずは監督との出会い、そして第一印象を教えてください。
監督と最初に出会ったのは、『GiantRobot』というアート・ポップカルチャー雑誌(現在はウェブのみ)と同名の店舗を出しているエリック・ナカムラさんの紹介でした。ウエスト・ロサンゼルスにあるBalconyというカフェで待ち合わせをしたのですが、一目見て監督の才能をその雰囲気から感じたので、何でもいいからぜひ一緒にやろうと言いました。
―監督とのやりとりはいかがでしたか?
最初に監督とお仕事をしたのが、『Daylight Savings』という作品で、どちらかというと、即興演技や「何も決めないで自然にやってみよう」というスタイルの映画でした。しかし、今回は映画の内容だけでなく、撮影方法もまったく違っていて、事前にたくさんのリハーサルをして入念に話し合いました。
現場での監督の印象は正直あまり変わりませんでしたが、私たちが何かとても大きな試みをやっているのだという感覚が日々あり、とても楽しかったです。
―挑戦したことや新鮮だった点はありましたか?
やはり、一本の映画で二つの言語を使うという点が初挑戦だったので、どうなるかやってみるまでわかりませんでした。大変難しい挑戦になるかも知れないと思いましたが、やってみると無理なく言葉が出てきたので、楽しむことができました。
―印象に残っているシーンはありますか?
印象に残っているシーンは、デル・モラル保安官とのやりとりや刑務所のシーン。台本のことを忘れて、彼と本当に謎解きをしている感覚でした。
―今回演じたアキに共感するところはありますか?
好奇心旺盛なところは似ていますね。でも、普段の私は感情がもっと顔に出ていると思います。アキは本当に感情を顔に出さない。だからこそ、大きなスクリーンで観てもらいたいですね。よく見るとアキの感情は隠しきれてはいないので…。
―役作りにあたり、大変だったところを教えてください。
リハーサル期間が長かったので、あの世界にいつのまにか自然に入り込んだという印象です。
―今後出演する予定の作品はありますか?
三池崇監督の新作『風に立つライオン』に出演しました。自分でも短編映画などを脚本、監督したりしているので、そちらの方面でも学んでいければと思っています。
―では最後に、バイ・デイリーサン・NYの読者へメッセージをお願いします。
内容や映画の面白さを楽しんでいただきたいのはもちろんですが、見どころは米国にいる日本人が、他文化と触れ合っていく姿を表現しながらも、それが等身大で無理なく描かれている点だと思います。
忍者、芸者、侍、寿司、オタク、KAWAIIという、世界で「日本と言えば?」と問われて答える要素は何も入っていません。ただそこに、日本人が生きています。今までそういう映画はなかなかなかったのではないかと思いますので、是非ご覧ください。