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2007年12月02日

俳優・今井雅之に聞く
BOUT NO .2

本紙発行人がNYで出会った人達とストリートファイト“対談”
監督・主演映画「THE WINDS OF GOD KAMIKAZE」
いよいよNYで一般上映

ジョシュ・バーネット
 ニューヨーク近代美術館(MoMA)で先月試写上映された、今井雅之監督・主演による映画「THE WINDS OF GOD KAMIKAZE」。地道なプロモーション活動の末、漕ぎつけた米国での上映ツアー。ニューヨークでの一般上映(12月7日から2週間)を目前に控え、全編英語で制作した渾身の一作についてその思いを語ってもらった。(滞在先のNYのホテルにて)

"パールハーバー"に公開の意味

今井雅之  - 先日行われたプレミア試写会、大成功おめでとうございます。今回何が凄いって試写会をあのMoMAで開催しました。

 今井 いやぁ僕もびっくりしました。最初、NOVAかと思ってしまいました(笑)

 - 駅前留学(笑)?

 今井 いや、冗談じゃなくって、はじめは本当にそう思ったくらいで。こっちのアーティストの人達に聞いたらびっくりしちゃって『自分たちは世界中からMoMAで展示をするためにこうしてやってきたのに、おまえはもうやっちゃったのか』みたいに言われました。本当はね、ダウンタウンのもうちょっと小さなとこでやる予定だったんです。だけど『こういう作品はMoMAレベルでやらないとそういう作品になってしまうから』ってチームの人にいわれてね。

 - 全米各地で何度も上映会をされた中、今回のNY上映会はそのどれとも気持ちが違ったとお聞きしましたが。

 今井 やっぱり最後の上映場所にNYを選んだのは個人的に好きなんですね、この街が。この世田谷区とおなじくらいの広さのところに世界の金融と経済と芸術が集中してる。舞台やってる頃からこの街で勝負してえな、と思ってましたし。エンターテイメントを象徴するこの街で僕たちアジア人が攻め込んで、最後にMoMAで上映できたのは本当に嬉しい事でしたね。

 - 誰も挑戦しなかった題材に挑戦されました。

 今井 『この指とーまれ』でやってきた感じですから。結局誰もとまらなかったけど(笑)作った本人としては最低レベルの到達点には行けたのかなとは思っています。ただ興行主としてはまだ全然返せていないですね。この5年間を思い起こしてぱっとでてくる言葉は『孤独』なんですね。ほんっとに孤独でした。そりゃそうだ、好きで自分でやろうって言ったんだから。アジア人がこっちで何かを成し遂げようとする時の壁の大きさを改めて実感させられました。

 - その孤独のかいあってか上映後は観客もスタンディングオベーションでした。

 今井 いや、終わった今も怖いですよ。このまえもサンディエゴのプレスの方が絶対この後気をつけた方がいいって言うんです、マジな顔して。映画を観てあなたの意見には賛成するけどやっぱり危ない人もいるからって。でも作ってる最中は『怒り』を持って作ってた訳だから、ちょっと、わかってよって(いう気持ちで)。だからそれはしょうがないですね。

 - この作品を通じて今井さんが伝えたかったメッセージは一言でいうとなんだったんでしょうか。

 今井 とにかく一点、テロとあの神風攻撃ってのは全然違うんだよって。あの神風の特攻作戦を認めろって言うんじゃなくて、その戦闘機に乗っていた方々はテロのような卑怯な宗教に絡んだ物ではなかったんだよって。それを言いたくて作ったんでね。こっちの辞書にも特攻隊=クレイジーって書いてあるけど、戦争がクレイジーであって、特攻隊にいた彼らがクレイジーだった訳じゃない。実際乗ってた方は普通の人よりも紳士だった、そこを伝えたかった。僕がすごく日本人の好きな所は『後ろから斬らない』というところ。今は武士道なんてなくなってきちゃってるかもしれないけど、忘れちゃいけないスピリットですよね。一般人を巻き込むテロを神風とは表現してほしくなかったんです。

 - 全編英語劇ですからかなり英語の特訓をされたんじゃないですか。

 今井 しました、しました。とにかく徹底的にやりました。アクセントを出来る限りとる為に2年近く先生を雇ったり、一時は合宿なんかして、日本語しゃべったら100円みたいな事までことまでやってね。でもね、でもやっぱりネイティブと同じようにはしゃべれないですよ。20年、30年住んでないと。やっぱり30すぎてから覚えた英語ってのは限界あります。ただ、英語でやる以上は逃げたくなかった、っていうのが本音かな。こっちのアメリカの方々に観てもらわないと意味がないんでね。

 - いよいよ12月7日から2週間NYで公開されます。

 今井 12月7日ってのは現地時間で“パールハーバー”の日です。その日に公開する意味をね。アメリカのプレスの方にも『挑発的だ』なんていわれたり、どうしてもケンカしに来たみたいに思われがちですけどそうじゃなくてコミュニケーションをしに来ているので。実際アメリカの方で9・11は覚えてるけど12・7は忘れちゃってる人がいっぱいいます。言ってみれば殺し合いが始まった日ですよね。なんで殺し合いが始まったのかそれを思い出さなきゃいけない日だと思うんですよ。でないとまた繰り返す事になりますから。歴史ってのは未来の為にあると思うので。

 - この作品は今井さんのライフワークの一つだと思うのですが、ゴールを100としたら今は現在は何メートルでしょうか?

 今井 1・5メートルかな。まだまだ先は長い。こっちで勝負する為にはまず、アジア人である事、日本人である事の壁を越えていかなきゃ行けない。ハリウッドが5年や10年に一度、日本に興味を持つのを待ってるだけじゃダメなんですよ。だってハリウッドは待ってないじゃないですか、どんどん来るじゃないですか。やっぱりこっちも攻めていかないと、残念だけどこの戦後60年っていろいろな意味で待ちっぱなしだった訳です。例えば海外に出るとSONYとかTOYOTAとかは聞くけど日本人って顔が見えないよね。やっぱり重要なのはパイオニアである事、野球で言えば松井でもなく、松坂でもなく野茂でしょうね。彼が開拓したから今がある訳で。だけど今、野茂さんの事、日本でなんて言われてるか知ってます? 『終わった』って言ってるんですよ。そういう事いってる精神を変えなきゃいけないし、終わったんじゃなくて彼がパイオニアなんだよって。日本政府は彼を一生面倒見るべきだと思う。

 - 闘い続けてきた今井さんですが次回作の予定は決まってますか?

 今井 うーーん、今回のような問題作でなくどーでもいいような恋愛モノにしようかなって(笑)だったら誰も文句言わないでしょ。でも本音を言うとね、少し休み下さいって感じですね(笑)

インタビューを終えて

 常に闘ってる人だなと感じました。もちろんエンターテイナーとして物を創る時、採算を度外視するわけにはいかないけれど、それ以上に自分の伝えたい事を伝えていく。それが映画人と言うならなおさらメッセージとして作品を創っていく。そんな信念がインタビュー中にもヒシヒシと伝わってきました。作品のテーマは政治的にも重すぎて簡単には白黒言えるものではないと思います。ただ少なくとも生涯を通じて何かを伝えていくというその姿勢には男として惹かれるものがありました。今井さんにインタビューを受けて頂いたのは実はこれで3回目。その3回ともにまっすぐにこちらを見て熱弁していただきました。日本人だから、という事ではなく一度は必見の映画だと思います。

今井雅之 いまい・まさゆき

職業:俳優、監督、脚本、演出家
 1961年兵庫県生まれ。舞台、映画、テレビで活躍。著者も多数ある。陸上自衛隊第三戦車大隊退隊後、86年奈良橋陽子演出「MONKEY」で舞台デビュー、翌年にはテレビデビューを果たす。自ら中心となって結成されたエルカンパニーがプロデュースする「THE WINDS OF GOD」で91年文化庁主催芸術祭において史上初の原作・脚本・演技の3役で受賞、93年には国際連合作家協会芸術祭を受賞する。映画界においても95年日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞するなどテレビ・映画・舞台・小説など様々な分野で活躍中。
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「THE WINDS OF GOD KAMIKAZE」
NY上映は7(金)〜20(木)

今井雅之

 1988年より上演され続ける今井雅之演出の舞台劇を全編英語脚本で映画化。1995年に映画化されているが今回、米国公開用に全編英語でリメークした。
 〈あらすじ〉ドイツ系白人のマイクと日本人とアメリカ人のハーフのキンタは売れないコメディアン。彼らはある日、ニューヨークで交通事故に遭う。意識を取り戻すとそこは1945年の日本で、2人は日本人となり神風特攻隊員として出撃する事に。
・期間:12/7(金)〜/20(木)
・劇場:ImaginAsian Theater
・場所:239 East 59th St, NYC
・ウェブ:www.theimaginasian.com
・映画公式サイト:
 www.windsofgod.com
・初日舞台挨拶:12月7日夜7時
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