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2008年02月01日
演出家 宮本亜門に聞く
BOUT NO .5
本紙発行人がNYで出会った人達とストリートファイト"対談"!

ワシントンDCのケネディーセンターで開催される、日本の最先端の芸術を紹介するジャパンフェスティバルで、オリジナルの新作ミュージカルを発表する宮本亜門氏。公演を直前に控え、作品について直撃インタビューを行った。
水上作品をミュージカル化
「Up in the Air」DCで上演
「Japan! culture+hyperculture」 2008年2月7日〜10日まで
- 公演まであと1週間をきりました。今は一番お忙しい時ですよね。
亜門 とても順調です(ニッコリ)。本番はたった4日間なんですけども自分たちにとっては、その先のNY公演や日本公演を是非いつか実現したいと思っているので、今は大切に丁寧に創ろうとしているスタッフみんなの意気込みを感じているところです。
- 今回の「Up in the Air」の演出をするきっかけは何だったのでしょう。
亜門 水上勉さんの作品「ブンナよ、木からおりてこい」が原作なんです。僕が大学を卒業した頃かな、当時観て非常に感動したんです。一見、童謡やファンタジーと思いきや実は生と死という深ーいテーマがあり、単なる楽しいだけでなくそこにある精神性みたいなものにすごく惹かれたのを覚えています。そしていつか自分がやれたらなぁと漠然とは思ってたんです。で、その後に僕はここ(NY)で9・11を経験した。あの時の雰囲気も知ってるし街中からプラスティックのこげた匂いがしたのも覚えてる。それに(WTCから)人が飛び降りたという話も聞いていました。それから「生きるという事はなんだろう、死ぬという事は何だろう」という事を強烈に考えるようになったんですね。宗教とはまた別の部分で人により違う死生観がある、それを伝えたい時に、かといって布教活動するわけではなくひとつのドラマによって伝えていけたらと思ったんです。
- この作品自体の演出は亜門さんにとって初めてとなるわけですが。
亜門 (主役が)蛙っていうと、ちょっとね(笑)最初は「子供向けですよね」って断られかけたんです。でも9・11以降ますますその思いは強くなりしつこく蛙、蛙、って何回も言って(笑)、そうしたら(今回の)ケネディーセンターからお話があって。ただ、自分の作品を東京でこんな事やってますよって紹介する事にあまり興味がなく、日本の精神性が描かれているものをアメリカ人につたえたいと考えるようになったんです。(だから)できたらオリジナルをやらせてほしいと。それに吉井さん(注1)が乗っかってくれて、やっと具体的にスタートした感じです。
- 非常に魅力的なメンバーが揃ったと聞きました。
亜門 ええ、こんな小さなバジェットなのに。よく集まってくれましたよね(笑)。でもこの8人が実ににいいんです。ブロードウェイの中でもよくこのメンバーが集まったねって言われるほど、実力派揃いのキャストが集まりました。とにかくすごいです。「ヘンリー(注2)のおかげだよっーっ」て毎日言ってます(笑)それも含めてこの休憩なしの1時間30分の公演はある意味初めて演出をゼロから作り上げていったという、言ってみれば愛らしい子供のようなものですね。
- 今回のテーマは命という非常に重いものですね。
亜門 ホント重そうですね(笑)別にあえて重い物を選んでやりたいわけじゃないんんですよ。ただ、楽しくエンターテイメントをつくるだけでは面白くないんです。ただの技術屋さんになったような気がして。もちろん技術はもっと勉強したいし、絶対に必要なものですけど目的としては今、僕たちが生きている時代に語りたい事を演劇を通じて伝えていく、作品を通じて人と語る事なんです。演劇の歴史云々とか功績を残すとかどうでもいいんです。僕が死んだら僕の事もみんな忘れてしまうのも悪くない。だって天国には何も持っていけませんものね。
- 東洋人初のオンブロードウェイの演出をしたり、数々の賞を受賞したりしているのに!
亜門 賞ですか? 困ったな。あんまりよくわかんない(笑)もちろんそのおかげでお仕事頂いてこうやっていろいろな人とあえてありがたい話ですけど、それ以上は自分の中で響かないですね。「太平洋序曲」(注3)の時もノックをされた場所にたまたま僕がいたというだけで偉いわけでもすごいわけでも何でもない。(演劇という物を)好きで好きでオリジナル性を大切にする人だったら誰にでもチャンスはあるんです。だから僕も好きだという気持ちを大切にしたいとは思いますけど。
- 演出家、宮本亜門としては日本人の役者さんと海外の役者さん、どちらが演出しやすいですか。
亜門 どちらもやりやすいですよ。それぞれ(違う)面白さがあると思います。ただ、稽古場のうるささで言えばこっちの勝ちかな。ホントにみんな大声でしゃべる、しゃべる。友達同士のパーティーじゃないんだからよくそんなに話す事(あるな、と)昨日会ったばかりじゃん!みたいな(笑)でも楽しんで笑ってる中に本当の彼らのピカピカ光ってる才能がどんどん出てくるんです。日本の場合は怖いくらい稽古場が静かだからこっちが引き出していかなきゃいけないし、こっち(アメリカ)はいい加減うるさいよって言わなきゃいけない。でも(日本とアメリカを)行ったり、来たりして本当に面白いですね、人って面白い、国って面白いなって経験で感じれます。
- 抽象的な質問になってしまいますが、亜門さんが演出される時に意識されるのは日本人として世界を魅了したいという思のか、あるいは国籍云々とか関係なくいち演出家としてグローバルな視点から世界を楽しませたいという気持ちなのかどちらでしょう。
亜門 あえてその質問に答えるとすれば、両方、ですね。僕は日本の文化があまりに好きで茶道をやったり、日舞をやったり、そういう神社仏閣仏像とかが最も自分の好きな物なんです。そこに感じる神聖な無駄のない美しさにはため息がでるくらい愛してやまないです。そして、ともに自分が演出する時はある特定の日本という枠組みを伝えたいのではなく、そこにある様々な精神を養分にして、自分の中からにじみ出てくる物をいち演出家と表現したい。ある特定の日本というものを決めてしまっては自分が小さくなってしまう気がするんです。決して国旗を振りたいわけじゃない。でも僕の精神を形成するのに「日本」からもらった物はあまりに素晴らしい。これを世界に広めていきたいんです。そしてその気持ちはこれからも変わらないんじゃないかな。…これで答えになってます?(笑)
注1 吉井久美子・プロデューサー(ゴージャスエンターテイメント代表、同社はニューヨークを拠点に演劇、映画、スペシャルイベントのプロデュース、コーディネーション、企画等を行う)
注2 ヘンリー・クリーガー(ミュージカル「ドリームガールズ」など多くのミュージカル作品を手がけるブロードウェイを代表する作曲家)
注3 ブロードウェイの巨匠、スティーブ・ソンドハイムの作品を2004年、宮本氏が演出し、ブロードウェイデビューを果たしたミュージカル作品。(洋題・Pacific Overture)
インタビューを終えて
今回お会いしたのは実に4年ぶり。2004年の「太平洋序曲;Pacific Overture」の時にインタビューさせて頂いて以来でした。その時はオンブロード・ウェイにおいて東洋人初のプロテューサーという事で世界中の舞台人から注目をあびる大プロジェクトでした。そして今回の作品。亜門さんは「ある意味初めてすべてゼロから創りあげていった作品」と本当に嬉しそうな笑顔で答えてくれました。改めて、演出家、宮本亜門にとって重要なのは作品の規模でなくその作品を通じて伝えたいメッセージなのだなと実感しました。DCまで車で片道5時間、行く価値ありです。〈あらすじ〉「Up in the Air」は作家、水上勉氏の長編童話「ブンナよ、木からおりてこい」を題材に、日本を代表する演出家、宮本亜門が本格的なブロードウェイスタイルのミュージカル化に挑戦した作品。主人公は冒険好きな蛙のブンナ。ある日好奇心から木のてっぺんに登ることに。しかしそこで、いつもは天敵となる小動物達の命がタカの餌として奪われていくという恐ろしい出来事に遭遇する。死への限られた時間の中で、それぞれの動物達は死ぬことを恐れ、拒み、やがてその運命を受け入れていく。そんな動物達の死を身近に感じたブンナは、改めて命の尊さ、素晴らしさについて考え直す。
Information
【期間】2/7(木)〜9(土)7:30pm、10(日)3:00pm【会場】John F. Kennedy Center for the Performing Arts Family Theatre
【場所】2700 F St, NW, Washington, DC
【詳細】202-467-4600
【チケット】800-444-1324
【ウェブ】www.kennedy-center.org/programs/festivals/07-08/japan/index.cfm


