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2008年09月14日
国際空手道連盟極真会館館長 松井章圭に聞く
BOUT NO .17 - 完全版 -
本紙発行人がNYで出会った人達とストリートファイト"対談"!
日米のみならず、欧州、南米から極真空手の強者が、頂点を目指してぶつかり合う選手権「All American Open 2008 Karate Championships」(08年9月20日開催)。ハンターカレッジでの大会開催直前に控え、国際空手道連盟極真会館の松井章圭館長にお話を伺った。
「All American Open 2008 Karate Championships」
20日 ハンターカレッジで大会開催
- 押忍!館長にお会いできて非常に光栄です。今日は宜しくお願い致します。(ガッチガチに緊張して)
館長 こちらこそ。(にっこり)
- まず最初に今月20日に開催される「All American Open 2008」についてお聞かせ下さい。
館長 オールアメリカンといっても、日本、ヨーロッパからも選手が参加するので、ある意味国際大会と言ってもいいかもしれませんね。特に上位の試合に関しては世界レベルの選手がエントリーされているので。
- 世界各地で催されている極真のトーナメントですがこの「All American Open 2008」はどういった位置づけでしょうか。
館長 マンハッタンという地で15回目を迎えたという意味ではシンボライズ化された大会でもあると思います。それと同時に、ニューヨークという街でやってきたわけですから活気のある大会と言っていいと思いますね。ただ、これはニューヨークに限らず西側諸国、イギリスにしてもオランダにしても選手にはもっと活躍して欲しいという気持ちもあるんです。(欧米では)30年前にひとつのブームの波があって、今はひと息ついた状態です。ただ、やはり「All American」と銘打っているかぎり、アメリカ、カナダの選手には頑張って欲しいと思います。非常にいい素材はたくさんいると思うので。
- 今は、エリアでいうと中南米が活発ですか?
館長 そうですね。トーナメントになると南米の選手が上位に勝ち上がる傾向があります。もう、10年くらいかな、ブラジルの選手がトップにいますね。あそこは格闘技に限らず、全体的にスポーツはレベル高いですよね。サッカー、テニス、バレー、サーフィン。やはり昔から言われているハングリー精神も関係しているとは思います。混沌とした激動の環境に身を置くというのは「強さ」に無関係ではないと思いますね。
- 今現在、世界何カ国くらいに道場があるのでしょうか。
館長 今は130カ国前後に支部組織があります。大山総裁一代でこれだけの組織にしましたから。ただ今は極真というひとつの幹を持ちながらも枝葉を大きく広げないと心技体ともに栄養が取れない。そういった時代だと思います。門外不出のものを門の外に出したからにはやはり広がっていくしかないんですよ。多くの情報を取り入れて多くの価値観を受け止める。だから極真も大山道場から極真会館になった瞬間そういう道を歩き始めたんです。極真というものを志す多くの人達によりその価値観が切磋琢磨されていく。磨かれてその底辺の拡大により頂点を高くする。その作業を怠ると極真空手は極真空手でなくなるんです。ですから他の競技にも参加してそこから新たに得たものをフィードバックしていく。証明のために、追求のために、恐れずに表に出ていく。その挑戦は続けざるを得ない宿命と云っていいかもしれませんね。
- なるほど。これは館長としてはお答えにくいことかもしれませんが、大山先生が極真魂というものを提唱されてから時代は今、強さを求めるよりエクササイズ、運動不足解消の手段として道場通いをする人も多くなりました。その状況をどうお考えでしょうか。
館長 もちろんそれはとても歓迎すべき状況だと思います。一般に支持されて多くの人に影響を与えることは素晴らしいことだと思いますから。ただオリンピック競技でもない、プロスポーツでもない我々の求めるものはある意味で「最強」ということなんですね。そこに象徴されるわけです。それを横において物事は言えないんです。やはり強さを求めないという訳にはいかない。精神性、社会性、を裏付けるのはやはり強さだと思っています。それは時代がどう流れても変らない我々の志(こころざし)ですね。
- 館長自身が空手を始めたきっかけについてお聞きしたいのですが、当時周りの子供がサッカー、野球と他の選択肢を選ぶ中なぜ空手だったのでしょう。やはり強くなりたい一心からでしょうか。
館長 そうですね、強くなりたかったというのは裏をかえせばやっぱり自分は弱かったと思うんです。肉体的にも精神的にもね。それを自覚した時にやっぱりもっと強くなりたいと思うじゃないですか。でも他の子供が憧れるようなウルトラマンやスーパーマンは作られたキャラクターですよね。でも「空手バカ一代」の大山倍達は実在する。実在するなら自分にも(そうなれる)可能性はあるんじゃないか。その事実のインパクトは当時の自分にとっては相当強かったんでしょうね。
- やはり「空手バカ一代」世代として大山先生に憧れて。
館長 世代としてはそうなんですが実際のところは極真のことは全然知らなかったんですよ。全日本(選手権)のテレビを観てあーこれに出たい! って思ったのが最初でしたね。13で千葉の道場に入門したのですが16から本部に通い始めて、そこからそうですね10年近くは大山総裁の近くにいましたね。
- 館長にとってテレビの向こう、マンガの向こう側にいる人物になるわけですよね。
館長 ある意味、マンガ以上の部分もあれば、生身の部分もありましたね。そういった意味では現実の大山倍達という人はやはりすごく偉大でもあり、凄く人間的でもありましたね。
- あの、これは一番お聞きしたかった質問なのですが、いま格闘技界はK-1でありMMAであり当時と比べ圧倒的に他流試合においても確立されています。もし、館長がいま現役なら、出場されていらっしゃいますか?
館長 うーん、何とも言い切れませんが(しばらく熟考して)…やっぱり無視はできませんよね(キッパリ)。ただね。ただ、当時も実際は(道場の中は)同じですよ。いろいろなことを想定し稽古してましたから。ま、公開の試合ではないにせよ。柔道出身とかレスリング出身とかいろいろな人間がいましたから、基本的にあらゆる意味で無差別の中でやっていたと思います。
- 館長が現役の頃と比べて競技自体は進化してると思いますが、やはり道場の雰囲気とか選手の個性に関しては今とは全く違いますか。
館長 雰囲気やたたずまいという点では全く変って来てますよね、我々の時代からは。どちらがいいという問題でなく、これは当然の時代背景の違いとでもいいますか、練習の絶対量から緊張感から世間の見方まで全く違うと思います。当時はジャンルとしての空手ブームだったわけでなく、本能的に強くなりたいとか、あたかも空手が最強であるという幻想を見ることが出来た時代だったんですよ。だから私も空手が強くなりたくて空手をやったんではなく、全てにおいて強くなりたくて空手をやったんですね。そしていま、伝える立場になってもその意識は変ってないと思います。大山総裁、我々の師匠がその時代に壮絶な人生を生きた、その貯金で今我々は生きてこれた。そういう時代ですよね。昔の道場の雰囲気(のまま)なら今の生徒は来ませんよ。変な話よく死人が出なかったねと言われるくらいですから。道場の隅で失神する人間がいる、稽古の邪魔なので隅におくと口がキレてるので血の色の泡を吹いてる、そのまま失禁したり、目があらぬ方向に向いていたりね。いま見たらぞっとすると思いますが当時は日常的にありすぎて何とも思わなかったですね。
- すごそうな日常ですね。館長は「百人組手」を達成された数少ない空手家ですが、当時のことを思い出されることってあるのでしょうか。
館長 経験したことのないような肉体の状況なんです。文字通り死ぬかと思った経験でした。当時、全日本チャンピオンになってからでしたから、肉体的にも精神的にも自分では強いと思ってたんですよ。でも度重なる打撃を浴びて、肉体的にも脱水症状になってそれでもさらに動かないといけない。ある意味軽く精神が錯乱してくるわけですよ。で、攻撃的でなく自己防衛的な動きになってしまう。もう来ないで欲しい、もう触らないで欲しい、泣き出したくなる、何でこんなことやってるんだろう、とかね。(武道として)本来ならば尊重しなきゃいけない相手に憎しみすら持ってしまう。
- 技術的や肉体的に向上させるものではないというか…。
館長 ま、肉体的には悪いでしょうね(アッサリ)。肉体の限界を超えていきますから。だから必ず「百人組手」をやった人間はその後、急性腎不全になります。たたかれた所の細胞が破壊されて、その破壊された細胞が血中をまわり腎臓の弁に詰まるんですよ。で、腎臓が機能しなくなる。もうこれは肉体的には絶対よくないですよ。それに加え全身打撲と脱水症状と。
- …凄まじいですね。
館長 でもその中でやはり精神の極限状態に立った時その人間の本性が出ますから、否応なく自分の本性と向かい合わなければいけない。その時に自分はこんな強いはずだったのに、なんでこんなに弱いんだとか、なんでこんなに情けないんだとか、そういった意識とも向かい合わなくちゃいけない。でもそれでも逃げられない、やらなきゃいけない、貫徹しないといけない精神と向かい合うわけです。すると100人の流れの中で技術的にもいままでフォーカスが合わなかったものがどんどんピチっとあってくる瞬間がある。30、40人から40、50人の間。いわゆるランナーズハイのような状態と云っていいかもしれない。もう息は上がってるけどこのままずっと続けられるんじゃないかなという感覚、それが20人から30人続くのかな。その時は本当にすっと相手の動きがよく見えるし、相手が動いた瞬間にそこに手足がのびていく感覚です。ただ、だんだんやはり疲労とともに合っていたはずのフォーカスがぶれて来て最後はもうボロボロになりますけどね。
- …(唖然)
館長 でも人間の身体は記憶力が良くて、その時のことをちゃんと覚えているんですよ。だから総裁の大山先生も重量挙げの練習の時、あがらない回数になると奥さんにキリを持ってこさせてね、お尻をつかせて、そしたらぎゃっとあがるでしょう。その勢いを身体が記憶する。すると次はあがるんですよ。僕らも腹筋をやってね、お尻の皮がやぶれるくらい腹筋をやって、身体がぶるぶる振るえてもうあがらなくなる。その時に師範が来て、竹刀で思いっきりおへそのところをばんと殴ったら、ばちーんと起き上がるんですよ。これがね、20回くらいあがりますよ。1回ごとに叩かれると。精神も身体も限界って自分が考えるよりずっと遥か先にあるんです。そんな体験を通じて(自分で)知ることが出来るんです。ひとりではなかなか出来ないですよ。
- 今この現代ではなかなかそこまで自分の精神と向き合える機会はないですよね
館長 なかなかね。自分自身の力に自分自身が驚くことがあるとしたら「百人組手」はその最もたるものでしょうね。
- 昨年までのトーナメントで出てきたスター選手、テイシエラ選手やアンドリュース選手はその限界を見て来た選手だからこそなんでしょうか
館長 本当に過酷な稽古をしてきたと思いますがまだまだ彼らの潜在能力からすると気が付いていない部分も多いと思います。あんなもんじゃないですよ。でもそれは意識がないと開花しないものですから潜在的なものがあっても最後まで潜在的に終わっていく人が多いのも事実です。それを顕在化させるということはやはり彼ら自身が強い信念をもって、そこに辿り着く事を望まないとだめですよ。潜在能力を掘り起こす力、その作業は大変です。ただ、たくさん掘り起こして来た人間はきっとこれからも掘り起こせると知っている。だから信念を持てるんですね。だからこそ、小さい山をたくさん超える事が大切なんです。最初から大きな山は越えられない。でも小さな山をたくさん越えて来た人間は途方もない山頂に霞がかかって頂上も見えないような山も絶対越えられると思えるんです。そう思えるかどうかが問題なんです。彼らは少なくとも小さな山はいくつも超えて来ていますよね。さらに高い山に行こうと思えるのか、それは彼ら自身が決める事ですから。我々から見たら我々が超えた事もないような大きな山を越えられる才能を持っているのは間違いないです。
- なるほど。最後の質問ですが極真会館館長にとってニューヨークとはどういった街ですか。
館長 私にとってはニューヨーク、特にここマンハッタンというのはアメリカじゃなく、「世界」だと思っています。このひとつの小さな島が、です。ここはもうね、世界の縮図なんですよ。人種、民族、宗教、文化、芸術。最高の物と、最低のものが混在して、ひとことでいうと地上最強の都市ではないかと思ってるんです。この先10年後、20年後はわかりませんが僕の中では世界で最強の街なんですよ。だから僕自身がここに住みたかったんですね。いま空手を通じて国際的な事業に従事していますが自分の子供達もどんな仕事であれ国際人になって欲しいという思いがある。それでここに拠点というか家をおいているわけです。
- ニューヨークは何か目的を持って日本から来ている人が多いと思います。そんな読者に最後にメッセージを頂けますでしょうか。
館長 ニューヨークが最強の街であるならば,ここに来る人たちはそれなりの大志を抱いて、それなりの大役を担って来ているんだと思います。そういう意味でもここで達成するか、挫折するか、これは2つに1つなんですよ。100で達成というならば99は達成ではない、挫折ですよね。この2つに1つは決して他者に導かれるものでない。自分自身が結果を導き出すものだと僕は思っています。だから必ず達成する側に立つ意識を常に持っていて欲しいなと思います。そういう人達がやっぱりニューヨークを支えるんだろうしね。逆にいうとそういう人達がこの国際社会の中で存在感を得るんだとも思いますよね。
インタビューを終えて
テレビは連日、コメンテーターやいわゆる常識人と呼ばれる人々、はてはミュージシャンまでの「大切なのは結果じゃない」「人生はレースじゃない」「元々特別な個性で云々」といったフレーズを流しています。そんな時代において館長ははっきりと「我々はあくまで勝敗にこだわっていく生業ですから」と言いきられました。全世界1000万人以上いる極真空手のトップでもあり、全日本だけでなく全世界選手権をも制した男は「百人組手」完遂の話の際「やはり僕は弱かったんでしょうね」と笑いました。多分かっこいいとはこういう事だ、と「ガチ」連載史上最も鳥肌の立った回でした。「All American Open 2008 Karate Championships」
観戦チケットを4組(8人様)
デイリーサン読者4組(8人様)に試合観戦チケットをプレゼントします。大会は9月20日(土)。(会場:Hunter College Sportsplex(at 68th St & Lexington Ave)212-947-3334、
www.kyokushinkarate.com
)
● 応募方法:お名前、ご住所、Eメールアドレスを明記の上、下記までご応募ください。
● 応募先:DAILY SUN NY編集部「『All American Open 2008』観戦チケット」Email: reader@dailysunny.com 、Fax:212-922-9202
● 締切日:9月19日(消印有効)
※発表は発送をもって代えさせていただきます。
松井章圭(まつい しょうけい)
職業:国際空手道連盟極真会館館長1963年東京生まれ。76年、13歳で極真空手に入門。入門後約1年で初段を取得。80年、17歳で第12回全日本大会に初出場第4位入賞。85年には第17回全日本大会で優勝を飾る。86年空手界最大の荒行といわれる「百人組手」を完遂する。87年、第4回全世界大会でついに優勝を修める。94年、大山倍達総裁の生前の遺志に基づき館長に就任する。現在、組織運営のかたわら世界各地を訪問し、技術指導、後輩の育成にあたる。
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