ニューヨーク州監察長官のトーマス・ディナポリ氏は2月29日、ニューヨーク市の証券業界が昨年4月から12月にかけて、4300件の雇用を損失したことを発表した。ダウ平均は前日の28日、リーマン・ブラザーズ破綻前の2008年5月以来初めて終値で1万3000ドル台に回復したが、同市の証券業界は経済破綻から完全に回復していないことが明らかとなった。
発表によると、10年の時点で同業界の年俸は平均36万1180ドルと16%増加したが、昨年の平均ボーナスは12万1150ドルと、10年度と比較し約1万8000ドル減少、さらに12年は14%の落ち込みが予想されるとのこと。
ディナポリ氏は「同市の証券業界では経済危機が継続している」とするが、ニューヨーク市の行員の平均年俸は民間企業平均の6万6110ドルと比較しても5倍以上高く、所得格差は依然大きいままだ。
発表が行われた同日には反格差社会デモ「ウォール街を占拠せよ」の参加者らがマンハッタン区ミッドタウンにあるバンク・オブ・アメリカ本社ビル付近で抗議運動を計画していたが、警察により阻止された。
参加者らは証券業界の落ち込みに対し、金融業界が自ら招いた損失であるとの見解を示した。抗議者のひとりは、「我々の抗議運動の成果だと言う人もいるが、金融関係者が仕事を失うことが運動の目的ではない」と強調した。