10月29日に大西洋岸に上陸し、温帯低気圧に変わりニュージャージー州やニューヨーク州を含む米東海岸を襲った巨大ハリケーン「サンディ」だが、11月2日現在も市民にさまざまな影響を与えている。州当局によると、サンディが州にもたらす被害総額は500億ドルに達する。
ニューヨーク地方に電気・ガスを供給するコンソリデーテッド・エジソン(コンエド)によると、ニューヨーク市とウエストチェスター郡では65万世帯が停電となり、依然、復旧作業が続いている。マンハッタン区では39丁目以南のほぼ全世帯で停電となり、携帯電話などの使用も困難な状況。完全復旧は地域によっては約10日掛かる見通しだ。また、ガソリン不足も深刻で、トライステート各地の給油所では〝ガソリン待ち〟をする人が長蛇の列を作っている。
2日未明の時点で、ニューヨーク州を含む15州での死者数は90人に達した。多くは倒木による被害で、ニューヨーク市では少なくとも40人が死亡。また、クイーンズ区のロッカウェー半島にあるブリージーポイントで発生した大規模火災により、民家50棟以上が全焼した。
コンエドは、サンディの被害を予め予測し、事前にロウワーマンハッタンへの電気の供給を停止していたが、その後イーストリバー沿いにある変電所の爆発を受け、同区内の停電被害が拡大。同社関係者は、現時点で爆発の原因が変電所への浸水か暴風雨によって飛んできた瓦礫によるものかは把握していない、という。
大型ハリケーンの直撃を受け、バラク・オバマ大統領は10月30日未明、ニューヨーク市とロングアイランドに「大規模災害」を宣言し、水害による被害が大きい地域の回復に向け、優先的に連邦基金を回すことを約束した。
マンハッタン区のキップスベイにあるニューヨーク大学病院ランゴーン・メディカルセンターでは予備電源が正常に稼働せず、29日午後に入院患者ら約200 人が別の医療施設に緊急搬送された。同医科大学長ロバート・グロスマン氏によると、入院患者のうち20人は人工呼吸器が必要な新生児などで、階段を使って地上で待機している救急車まで運ぶ必要があったと、苦労を語った。
これらの他にも、6番街と57丁目にある建設中の90階建てビル上のクレーンが暴風によって倒れ、今にも落ちそうな状態であったり、チェルシーにある商業ビルの一部が倒壊したりと、サンディはトライステートエリアに甚大な打撃を与えた。