米小売り最大手のウォルマート・ストアーズが長年にわたって調整を続けてきたニューヨーク市内への出店計画を断念しようとしていることがこのほど、明らかとなった。
同社は昨年9月、ブルックリン区東ニューヨークに同市初となる出店を計画していたが、労働組合らの強固な反対を受け、中止に追い込まれていた。
昨年の反対運動では、労働組合らが同社の賃金制度を激しく批判し、市内への参入が実現すれば、地域の労働者が大きな打撃を受けると主張していた。また、同社と価格競争できない地域の小売業にも経済的な打撃を与えるとして懸念されていた。
さらに昨年4月には、米紙ニューヨーク・タイムズが独自に調査を行った結果、同社幹部がメキシコで新店舗設置の認可を得るため、同国の政府役員へ賄賂工作をし、その事実を隠ぺいした疑いがあると摘発するなど、さまざまな問題が浮上している。
政治界でも、次期ニューヨーク市長選に立候補したクリスティン・クイン市議が「同社が雇用形態や小規模商店に対する問題点を大幅に改善しない限り、市は決して(同社の)市内参入を受け入れない」と断言しているほか、同じく市長選に立候補している市政監督官のビル・デ・ブラシオ氏も「参入は市内の失業率悪化につながる」と主張しており、強固な反対姿勢を示している。
同社は最近になって出店計画の一環として雇っていたコンサルタントらとの契約を打ち切ったとされる。しかし一方で、参入計画に詳しいとされる情報筋によれば、同市内の別の場所での新たな出店計画に関心を示しているという。