地球温暖化による最悪のシナリオでは、2080年にはマンハッタン区内の温度上昇に起因する死亡者数が、年間1000人増加することもありえるという研究結果がこのほど、コロンビア大学の地球研究所とメールマン公衆衛生学部によって発表された。
研究論文を共同執筆した同研究所研究員のラドレイ・M・ホルトン氏によると、同区の年間平均気温は50年には華氏3〜4度、80年には4〜7度上昇する。すでに同区の気温は周辺地域よりも5度ほど高いが、過去の二酸化炭素排出量を考慮すると、今後の気温上昇も避けられないという。
同氏は2010年にロシアで発生した熱波により5万人以上が死亡した事例を挙げ、「高齢者、幼児、病気治療中の人へのダメージは大きいため、特に注意する必要がある」と警鐘を鳴らす。
ニューヨーク市では07年以降、市内の二酸化炭素排出量を30%軽減するという目標を掲げ、100万本以上の植林、節電、リサイクルなどを推進するほか、建物の屋根に熱を跳ね返す色のペンキを塗るといった活動も実施してきた。
これらの活動に対しホルトン氏は、同市の温暖化対策に取り組む姿勢を称えつつ、「温暖化は地球全体の問題であるため、低所得者などにエアコンを配布し熱中症を回避するというのは短期的な対策にはなるが、結局は二酸化炭素の排出量を増やすことになり、さらなる温暖化につながる」と指摘した。
ニューヨーク市保健局の2011年度の報告書によると、1997年から2010年までに熱中症で死亡した市民は152人に上る。