米AP通信による公式データの分析から、米国内の所得格差に伴う失業率の偏りが、過去10年間でもっとも大きくなっていることが明らかとなった。
昨年の失業率を所得額別に分析したデータによると、年収が2万ドル以下の低所得者層における失業率は約21%と非常に高く、1930年代の大恐慌時代とほぼ同水準だった。一方、15万ドル以上の層では失業率は3.2%にとどまっており、所得層の違いによって就業率に大きく差がある現状が浮き彫りとなった。
中でも経済復興の遅れが指摘されているニュージャージー州では、2010年からの2年間で失業率の改善はわずか2.2%にとどまり、所得額も全米で3番目の低水準となっている。
専門家は国内で景気が二分している状況を、「“ドミノ効果”で低所得層が労働市場から押し出されているため」と説明。グローバリゼーションや技術の進歩によって、中間レベルの職が失われたことにより、大卒程度の資格を持つ労働者が低賃金労働に流れる傾向が続いているためだという。
しかし、労働経済学を専門とするハーバード大学経済学部のリチャード・フリーマン教授は、「経済発展または労働組合の影響力拡大が実現しない限り、最下層労働者が労働市場から押し出される現象は今後も続くだろう。グローバリゼーションの過渡期である現代においては、この流れが変わるとは考えにくい」と予想する。
オバマ大統領は先週、米ABCテレビのニュース番組に出演した際、「給与や所得の増額が、中産階級と低所得層に行き渡っていない。共和党が提案している予算の大幅削減案は、このような所得格差を助長する」と強調し、格差対応策の必要性を訴えた。