立ちはだかる課題さまざま 新NY市長、市政改革の実現なるか

地元NY市の各紙は連日、新市長に関する特集を組むなど、市民の期待も高まっている

 5日に行われたニューヨーク市長選では、民主党のビル・デ・ブラシオ氏が共和党のジョセフ・ロタ候補を大差で破り、当選が決定した。
 選挙戦では終始、ブルームバーグ政権の政策に反対姿勢を示し、富裕層への増税やニューヨーク市警察局(NYPD)の制度是正など、大胆な市政改革を市民に約束してきたデ・ブラシオ氏だが、これらの政策の実現に向けて、乗り越えるべきさまざまな課題点が指摘されている。
 デ・ブラシオ氏が市政改革を成功させる上で鍵となるのが、同氏のかつての上司でもあるニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ氏との関係だ。同じ民主党とはいえ、左よりのデ・ブラシオ氏に対し、クオモ知事は中道寄りの立場を貫いてきた。公には民主党体制のもとで市と州の連携体制を唱えているものの、両者の関係は一筋縄ではいきそうにない。
 なにより、デ・ブラシオ氏が掲げてきたさまざまな公約を実現するためには、最終的に州政府の許可が必要となる。だが、公約の柱の一つである富裕層への増税政策を例にとっても、クオモ知事が2014年中の実現を目指している減税構想と対立することになる。
 また、ブルームバーグ政権から引き継ぐことになる課題の一つが、ニューヨーク市職員の労働組合との対立だ。組合側は契約更新の遅れなどを理由に賃金を遡って引き上げることを求めており、これが通れば市の年間予算の1割近くにあたる63億ドルが必要となる。
 その上、デ・ブラシオ氏は政界での経験が浅いこともあり、力強い市政運営のための強力なチームを作り上げることが急務となるが、巨額の私財を投入して有能な人材を次々に登用したブルームバーグ氏とは異なり、資金には限界がある。さらに、各庁への監視を強化する方針を明言している同氏のもとに、優秀な人材が集まるかどうかを疑問視する声も多い。
 デ・ブラシオ氏は公約のもうひとつの目玉として、NYPDによるストップ・アンド・フリスク(職務質問による捜査方法)制度の見直しを挙げている。だが、ブルームバーグ政権で大幅に低下した市内の犯罪率が、同制度の廃止により少しでも上昇すれば、対立勢力から猛攻撃を受けることは必至だ。
 2012年の市内の殺人件数および銃の発砲件数が過去最少となり、13年の同件数もさらに25%減少することが見込まれている中、デ・ブラシオ氏は、NYPDの制度改革を実施しながら犯罪率の低下傾向を維持するという、困難な課題を突きつけられることとなる。
 さらに災害への対応も、ニューヨーク市長としての手腕を厳しく問われる課題だ。ブルームバーグ政権においても、10年に発生した吹雪への対応の遅れが激しい批判を呼び、3期にわたる任期中の汚点の一つとなった。自然災害への対応の失敗は、政策全体への支持率を大幅に下げる可能性があり、慎重な対応が必要とされる。