2008年の結成以来、日本国内にとどまらず、アジア、欧州、米国──と世界各地でライブを行うなど、国境などまるで気にしていないかのような活動を続けているVAMPS(ヴァンプス)。音楽メディアでの評価も高く、ファンも増え続けている。13年2月には、日本に拠点を置く最大手の外資系レコード会社ユニバーサルミュージックのレーベルに移籍。12月には、ロサンゼルスとニューヨークで公演を行った。日本を飛び出したふたりに、14年に向けての想いを聞いてみた。
(インタビュー:12月6日、インタビュアー子池弘子)
H:HYDE
K:K.A.Z
ラルク アン シエルのボーカルHYDE(写真右)とOblivion DustのギターK.A.Z(同左)によるロックユニット。2008年に結成し、同7月に「LOVE ADDICT」でデビュー。これまでに国内・海外合わせて250本以上のライブを開催。13年2月に自主レーベル「デリシャス・デリ・レコーズ」に移籍。
僕たちは、まだまだ小さな船。これからが見せ所。
ーロサンゼルスからニューヨーク入りされたおふたり。ロサンゼルスでの公演はいかがでしたか?
H:3年前にもライブをやったんでスパンが短いかも知れないとちょっと不安だったんだけど、即盛り上がって。次に繋がるような予感がしましたね。例えば、来年来ても会場が埋まるんじゃないかなっていう。
ーK.A.Zさんはいかがでしたか?
K:そうですね、思ったより寒かったんだけど、会場はすごく盛り上がって、とてもいいライブができましたね。
ーそもそも、おふたりで音楽を始めるようになったきっかけは?
H:僕がソロ活動を始めるにあたって、バンドメンバーとしてK.A.Zくんに入ってもらいたかったんだけど、彼自身ほかのバンドをやり始めたばかりだったんでちょっと難しくて…。「じゃあ、プロデューサーとしてなら?」ってお願いしたら、OKしてもらって。だから最初は日本でのHYDE名義のアルバムのプロデューサーとして、それから一緒に音楽を作るようになって、「VAMPS」っていう名前に変えました。
ーそこまでK.A.Zさんじゃなきゃダメだと思われたのはどうして?
H:彼の音楽的なセンスが、僕にはちょうどストライクだったんです。彼のやってるOblivion Dustっていうバンドもすごくカッコいいし。その要素がうちのバンドにあれば、もっといいなと思ったので。
ーそういう話がHYDEさんからあった時、K.A.Zさんは?
K:嬉しかったですね。最初、ラルク アン シエルのライブを観に行って、HYD
Eはフード被ってずーっと歌ってて。この人いつ脱ぐんだろうって、そこが逆に格好良くって(笑)。そんなに話はしなかったけど、ライブ後の打ち上げでも、席を用意してくれたり気を遣ってくれて。話をもらった時はちょうどバンドを始めちゃってた時で、でもあっという間にそのバンドが終わって。逆に良かったのかな。
ー活動を開始した時から、ふたりで大事にしてきたものは具体的に何ですか?
H:お互いバンドをやってて、バンドの面白いところも分かってるけど、窮屈なところも分かってるから、VAMPSでフットワーク軽くできるっていうのはすごい強みだと思うんですよね。音楽が良くてもそれができないとなかなかね、広がっていかないというか。例えば、僕たちなら「来年はこうしようよ」って夢を語れる。でも、バンドってお互いみんながリーダーみたいなところがあるから、「僕はこうしたい」ってなったらもう話が進まない。フレキシブルに計画できるのは、すごく大きいと思います。
ー約2000人規模の会場にこだわったライブも、そのひとつですか?
H:僕自身が、そこはこだわりがあって。オールスタンディングって、見た目がロックだと思うんです。カオスで、危険な感じもするし。僕自身初めてライブハウスに行った時、すごくドキドキしたし。
ー今回、2枚のアルバムに入っている曲をもう一度作り直す作業をしましたよね?
H:このアルバムは日本では「ベスト」っていう扱いなんですけど、世界では「ファーストアルバム」っていうイメージ。初めて世界でリリースされるにあたって、自分たちのベストな状態を詰め込みたかった。今まで持ってるものをさらにもう1回ふるいにかけて、良い曲を集めて、思い残したことはないかって。作りたかったっていう気持ちは強いんだけれども、作ることが必ずしも楽しかったかと言うと、そういうわけではないですね。やっぱり一度作ったものを超えるのって、なかなか難しいんで。かなり面倒だし、エンジニア泣かせだったと思うし。すごくつらい作業ではあったかも知れないけれど、すごく精度の高いアルバムができたと思うんで、そういう意味では嬉しいですね。
K:作ってる時っていうのは、葛藤だったり、出来るまで気が気じゃないっていう、ずっとそういう気分で。1回ミックスしたものをさらに良くするって言っても、絶対そうなるって約束はないし、新しいアルバムを作るよりも大変な作業かもしれないですね。
ーアルバムは全部英語ですよね?
H:もともとVAMPSはほとんど英語だったんで、変わったのは全体の20%くらい。それでも、全部歌い直したんでね。日本でまず僕の英語の先生と歌を録って、またこっちでエンジニアが気に入らないところを歌い直して、2重にフィルターかけてやったんですけど。ホンマ分からんとこで怒られるからね。「えっ? 何が違うの!?」っていう(笑)。そういうストレスはありましたけど、自分の中で「やれるとこまでやった!」っていう確信がないと、このアルバムを作る意味がないし。作ってる時、ファンは待ってるわけだし。日本のファンは、新しいアルバムの方が欲しかったと思うんですよ。でも、これにすごく時間をかけてしまったから、ニューアルバムを作る時間はないし。自分が納得できるものがここでできないと、待たせてるファンにも顔向けできないからね。だからそこはちょっと意地張って、ホンマに自分が納得できるとこまで行きたいと思ってそこまでやることが、みんなに向けての誠意かなと。あと、英語のニュアンスは、メロディーにのらなければ意味がないので、その辺は「うまく伝わってくれ!」って祈るしかないって感じですかね。
ー何故、「世界」なんでしょうか?
K:音楽をやってる以上は、やっぱり多くの人に自分たちの作った曲を聴いてもらいたいって思うわけで、逆に自分たちから「日本だけ」とか決めてやっていくのもおかしな話だし。小さい頃にバンドを始めて、音楽やりたいって言って、日本だけでやりたいとは思ってなかったし、かと言って海外でやりたいとも思ってなかった。ただ、音楽をみんなに聴いてもらいたいからやってきた。
ー海外では、わずらわしいことも多いのでは?
H:日本と同じようにいかないのは、そういうもんだと思ってるんで。少々何かがあってもしょうがないかなって。あと、日本人がきっちりし過ぎというか、こうあるべきって決めつけてるところ…ありますよね。例えば、タクシーに乗ってちょっとでも対応が悪いと客が怒ってしまう。客の方が態度がでかくていいって決めつけてる。そういうところがあるなぁと僕も思ってたんで。海外に出ると、それがなくなる。対等になるんです。そういう意識も重要かなと思いますね。
ーニューヨークは好きですか?
H:僕、やることがないんですよ…来ても。田舎が好きなんで。何か楽しいことを教えて欲しいんだけど、こっちの友だちも「教えてやるよ」って言う割には教えてくれない(笑)。
K:前は嫌いだったんですけど(笑)、レコーディングでクイーンズに1カ月くらい居て好きになりましたね。
ー今後はどんな活動をしていきたいですか?
H:海外に向けての本格的な活動がやっとスタートしたという感じなので、2014年はもっと米国とか海外に攻めていけるような環境にしていきたいと思ってます。
K:新しい音源も作ったりして、またニューヨークにライブに来たいと思います。
ー最後に、ニューヨークで暮らすファンにメッセージを。
H:少し、僕たちと似てるのかなって気もしますよね。僕らは音楽を米国で認知させようと日本からやって来ている小さい船だと思うんですよね、今はまだね。いかに大きな船になってこっちにやって来て、VAMPSっていう旗をいくつ立てれるかっていうところなんでね。その辺は多分同じ気持ちというか、近いものがあるんじゃないかなと思うんで。ただ、僕たちはまだまだスタートしたばっかりなんで、こっちにいらっしゃる方に近づけるかっていうのは、これからが見せ所だと思うんでね。僕たちは先人の方々の道を参考にもするし、僕たちも参考にしてもらえるような活動をしていこうと思います。
K:仕事でストレスも溜まるだろうし、学生も成績がなかなか伸びないとかね。VAMPSでも聴いて、ストレス発散して欲しいと思います。ライブがあったら、ぜひ遊びに来てください。