冤罪により23年間にわたって服役していた男性がニューヨーク市を相手取って起こしていた裁判で、市側が640万ドルの慰謝料を支払う内容で合意したことが、20日分かった。
原告のデービッド・ランタさん(59歳)は1990年、ブルックリン区在住のユダヤ教指導者を殺害した罪で有罪となり、懲役37年6月が言い渡された。ランタさんは一貫して無罪を主張し、上告を繰り返したが、担当していた連邦検事はこれを棄却していた。
しかし事件発生から20年後、捜査当時に目撃者として証言を行った人物が、ニューヨーク市警察庁(NYPD)のルイス・スカーセラ刑事から「(面通しでは)鼻の大きな男を(犯人として)指差せ」と指示されていたことを告白。これを受け、市検察局が再捜査の実施を命じたところ、さらに2人の目撃者が事件当時にランタさんが犯人であるかのように虚偽の証言を行っていたことを認めた。
このうちの一人は真犯人であるジョセフ・アスティンさん(すでに死亡)の妻で、「夫は司祭を殺害したと話していた」とあらためて証言した。
警察は当時、アスティンさんを容疑者の一人とみていたが、同氏が交通事故で死亡してからは捜査対象から外したという。その後、スカーセラ刑事がすべての目撃者に対してランタさんを犯人に仕立て上げるように指示していたとみられる。
この結果、市当局はランタさんの有罪判決を誤りとして無効とし、ランタさんは昨年3月に釈放された。
市検察局は、「今回の決定はすべての関係者にとって最良のものとなった。市の歴史上、非常に遺憾な事件が幕を閉じることになる。検察局が迅速な対応をとったことを嬉しく思う」とコメントしている。