警備態勢に懸念の声 倫理観問う声も

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 米中枢同時テロで崩壊した世界貿易センター跡地に建設中のワン・ワールド・トレード・センター(1WTC)に、ニュージャージー州出身の16歳の少年が侵入した問題を巡り、同ビルのセキュリティー対策について懸念が高まっている。
 地元紙ニューヨーク・ポストによれば、現段階では敷地内の監視カメラは一台も作動していない状態だという。
 1WTCでは、最終的には4000万ドルを投じて障壁やチェックポイントを設けるなどのセキュリティー対策が予定されているが、実際にはまだそのほとんどが設置されていないのが現状だ。またこの対策を巡っては、周辺住民らが「過剰であり、交通に悪影響を与える」として、昨年秋に市を相手取り訴えを起こしている。
 市側はこれに対し、セキュリティー対策は必要であり、「設備はできる限り目立たないものにする」と反論。この訴訟は先月却下され、原告側は上訴を行わない意向を明らかにしている。
 同センターを訪れていた英国出身の観光客は、少年が忍び込んだことについて、「突発的な出来事で、米国の国防を脅かす事件とは思えない。長年英国の軍隊で危険な立場を経験してきたが、個人的には今回のことは心配におよばないように思う」と感想を述べた。
 2700人以上が犠牲となったテロ跡地は厳重な警備が絶対とされているため、今回の事件を受け、多くの市民が警備態勢の見直しを訴えている。ニューヨーク市のビル・デ・ブラシオ市長も先日の会見で、「衝撃的で困った事態だ」とコメントしている。
 ニュージャージー州出身のジャスティン・カスケホ容疑者(16歳)は16日午前4時ごろ、1WTC周辺の工事現場のフェンスにあった直径約30センチの穴から敷地内に侵入。6階まで足場をよじ上り、エレベーターで88階まで移動、そこからは階段やはしごを使って尖塔部分まで上ったと供述している。