洋裁店や生地屋などが数多く立ち並ぶ、マンハッタン区ファッション・ディスクリクトの中心部にある「Abe’s Tailor Shop(エイブズ・テイラー・ショップ)」。同店は紳士用貸衣装と仕立て屋という、ふたつの顔を持つ。階段を上がって店内に入ると、優しい笑顔の兄弟が出迎えてくれた。
急な時でも、手頃な料金で借りられる タキシードの種類も豊富
この地で20年続くこの店を営むのは、10代から今日まで仕立て屋として働く、ロシア出身のマイケルさんとアレックスさんのヤグダエフ兄弟。米国に移住後は、世界でも有名なファッション専門大学であるFITで学んだ。インタビューに応じたアレックスさんは「大切にしているのは、お客さんに喜んでもらえるような仕事をすること」と笑顔で語る。
店の顔のひとつ、紳士用貸衣装で力を入れているのは、タキシード。日本人にはあまり馴染みがないが、この街で暮らしているとホテルでのパーティーや公的なイベントに招待され、必要になることもしばしば。そんな時でも大丈夫。
ニューヨーク屈指のバリエーションを誇る同店では、レンタルにもかかわらずその場で試着し、一人ひとりの体に合わせて調整してくれる。サイズは子ども用の4から大柄な成人用78まで揃えられ、標準的な日本人男性なら36〜38が合うとのこと。シャツや蝶ネクタイなどのアクセサリーを含めて、一着のレンタル料金は100ドル(靴は除く)からと手頃なのも嬉しい。
「毎シーズン、人気のデザインを新たに取り入れているんですよ」とアレックスさんが見せてくれたカタログには、ラルフ・ローレンやカルバン・クラインなど、有名ブランドが数多く並ぶ。またタキシードだけでなく、スーツも豊富に取り揃えている。「日本人は、上質な素材を使ったスーツを好んで着ているよね」と、にっこり笑う。日本人の好みも知り尽くしているようだ。
丈詰め、サイズ直しなども可
気軽に相談を
同店のもうひとつの顔は、仕立て屋。ドレスやスーツのオーダーメイドはもちろんのこと、お直しの依頼も多い。シャツの袖直しは25ドル、スーツの袖は35ドル。生地やデザインにもよるが、ジーンズやズボンの丈は15ドルから行うほか、ウエストのサイズ調節、服に空いてしまった穴の修繕などもお手のもの。大きく空いていた穴が綺麗になったズボンを見せてくれたアレックスさんは、「ファストファッションが浸透した今日でも、やっぱりお気に入りの洋服を長く大事に着るっていいことですよね」としみじみ。「直しが必要なものがあるなら、まずは店に持ってきて。デザインや生地によってはできないものもあるけれど、アドバイスはできるから」と話す。
若者も多く利用 リピーターも
インタビュー中、もっとも印象的だったのは、多くの人々が来店するなかでも、特に若者の姿が目立ったこと。オーダーメイドのドレスを希望する女性や、ジャケットの仕立てを依頼する男―とにかく若者でも気軽に利用できるのが、同店の魅力だろう。店をよく利用しているという男性は、「急な時にもすぐに直してくれるので助かる。この店のサービスは最高だよ」と笑顔を見せた。店内でひっきりなしに鳴り響くオーダーの電話こそが、兄弟の親身な対応と確かな手仕事の証だろう。
Abe’s Tailor Shop / Abe’s Formal Wear
1013 6th Ave(bet W 37th & 38th ), NYC
☎212-921-1193
info@abesformalwear.com
www.abesformalwear.com