NY市長の低価格住宅政策 10年で20万戸目指す

NY市のビル・デ・ブラシオ氏が発表した低価格住宅政策について、多くの市民が期待を寄せる一方で、非現実的であるという意見も聞かれる


 ニューヨーク市のビル・デ・ブラシオ市長は5日、今後10年間で低価格住宅20万戸を提供する計画を打ち出した。
 ブルックリン区フォートグリーンで行われた記者会見で同市長は、「この計画の実施には多大な労力が必要となるが、実現すればニューヨーク市の在り方そのものを、市民にとって良い方向に変えることができる」と指摘。さらに「家賃が高くてやむなくこの街を出て行った住民に帰って来て欲しい」と強調した。
 住宅は高齢者や低所得者、ホームレス家族など、約50万人の市民に提供される予定だという。1カ月の家賃は630ドル以下に抑え、中間層については上限を3400ドルにするなど、所得別に家賃規制を設ける見通し。
 同市では、地域の所得中央値の半分以下、または年間所得が4万2000ドル以下の世帯を低所得世帯と位置付けており、現在、市内でこれに該当する世帯は約100万件に上る。一方、この所得で家賃をまかなうことのできる賃貸アパートは、市内におよそ42万5000戸しかないのが現状だ。
 今回の市の計画では、60%は既存の住宅を市の指導でリフォームし、残りの40%を新築するとしている。総額で410億ドルを投じる予定。予算のうち82億ドルは市の財政から支出し、差額については州および連邦政府からの助成金と民間からの出資を充てるとしている。
 不動産業界は、今回の市長の計画に積極的な姿勢を見せている。
 この計画に対し、ニューヨーク共和党のエド・コックス議長は「現実味がなく、具体策に欠けている」と否定的な見解を示している。
 デ・ブラシオ市長はこれに反論し、「計画は非常に具体的で詳細にわたるもの。高い目標を掲げ、皆で一丸となって実現を目指す」と主張している。