5月16日に総務省が発表した2013年の家計調査報告によると、2人以上の世帯の貯蓄現在高(いわゆる金融資産)は1739万円となり、前年から81万円(4・9%)の増加となった。この金融資産は、「定期性預貯金」の724万円、「生命保険など」の379万円、「通貨性預貯金」(普通預金など)の356万円、「有価証券」の240万円、「金融機関外」の40万円で構成されているが、今回の過去最高更新においては株高を背景とした有価証券の伸び(24%増)が大きく寄与した。
この金額を見た人の多くが、自身と平均との差に衝撃を受けたのではないだろうか。それもそのはず。この調査対象には4000万円以上の金融資産を保有する「大金持ち」(富裕層)が11%含まれていることから、「平均値」として表現される水準が押し上げられてしまうのだ。そのため、この類の指標には「中央値」なるものがあり、そちらは1023万円と、平均値を大きく下回る金額であった。
この中央値とは、金融資産の少ない世帯から多い世帯までを順に並べ、ちょうど中央にあたる世帯の値を意味する。つまり、トップの金額が100億円であろうと1兆円であろうと、中央に位置する人(調査対象が99人であれば50番目の人)の金額は変わらないため、中央値は「真ん中ぐらい」とイメージされる順位の金額を把握するのに適した表現なのである。経済のデータにはこのケースのように、平均値と中央値という、似ているようで全く異なる数値があることに注意しなければならない。
一方、同じ調査報告における負債現在高(負債額)は499万円となり、前年から30万円(6・4%)の増加となった。ここでは、その約90%を占める「住宅・土地のための負債」の増加が大きく寄与している。
「金融資産の増加を受けて住宅購入者が増えたため」という指摘があるが、筆者は金融資産の増加分以上に、「消費増税前の駆け込み需要」と「低水準の住宅ローン金利」が大いに寄与していると捉えている。実際、19日に発表された首都圏のマンション販売戸数(4月)は前年同月から約40%も減少。駆け込み需要への反動が明らかであることから、日本の住宅市場は当面、冴えない状態が続きそうである。
(在NYエコノミスト 西川泰亮)
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