厚生労働省は現在、公的年金の給付水準を物価の動向に関係なく毎年度抑制(減額)する仕組みを来年度にも導入しようとしている。それは、同省が6月3日に公表した「国民年金および厚生年金にかかる財政の現況および見通し」(5年毎に実施される財政検証結果)において、現在の年金制度の危うさが明確になったことと関係している。「日本の年金制度は実質的に崩壊している」と指摘する声は以前から聞かれていたため、新たにネガティブサプライズとなったわけではないが、既に年金を受給している世代が負担を分かち合う制度の導入に厚労省が動かざるを得なくなった事実は重い。
「所得代替率」「マクロ経済スライド」という言葉をご存知だろうか? 「所得代替率」は現役世代のボーナス込みの手取り所得に対する年金額の割合であり、「マクロ経済スライド」は少子高齢化の進行に合わせて年金の給付額を抑制する制度である。その所得代替率が50%を下回らないことは、これまでの制度における絶対的な前提に近いものであった。しかし、出生率や死亡率、物価上昇率、賃金上昇率、女性の就労の進展度合いなどに基づく今回の検証結果では、現在62・7%の所得代替率が2040年にも50・0%まで低下しうることが判明。そのため厚労省は、給付額を物価や賃金の動向に関係なく減額できる仕組みの導入に向かっているのである。
その一方、公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)には運用方針の見直しが迫られている。GPIFの運用資産は約129兆円と世界最大だが、保有資産が国債などの国内債券(約60%)に偏っていることが前々から問題視されており、国内株(約17%)や外国証券への投資比率を高める必要性が説かれてきた。
6月3日、安倍首相が田村厚労相に資産構成の見直しを年末まででなく9~10月に前倒しするように指示した。国内株の比率が近い将来に引き上げられるであろうことは既成事実だが、1%の引き上げでも1兆円を超える資金が債券から株式にシフトすることは、株式市場にも運用結果にも大きな影響を与えるであろう。
日本の公的年金は窮地に立たされているが、給付と運用の両面で今まさに変わり始めているのである。
(在NYエコノミスト 西川泰亮)
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