映画「私の男」に主演した女優の二階堂ふみさんが、先月27日より開催された「第13回ニューヨーク・アジア映画祭」で、これからの活躍を期待される若手俳優に贈られるライジング・スター・アワードを受賞した。
園子温監督の作品「ヒミズ(2011年)」や「地獄でなぜ悪い(2013年)」などの存在感ある演技も記憶に新しい。
女優として、ますます魅力を増す二階堂さんへ、今回の受賞の気持ちや今後の目標などを聞いた。
プロフィール
1994年生まれ。沖縄県出身。14歳で役所広司初監督作品「ガマの油(2009年)」でヒロイン役に抜てきされ、女優デビュー。第68回ベネチア国際映画祭に出品された園子温監督作品「ヒミズ」でマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)を受賞。以降、数々の作品に出演し、第35回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第56回ブルーリボン賞助演女優賞など、数々の賞を国内外で受賞している。
【公式サイト】www.nikaidoufumi.com
―ライジング・スター・アワードの受賞、おめでとうございます。今回の快挙を私たちも同じ日本人として、とても嬉しく思っています。
ありがとうございます。
私にとって、ニューヨーク(NY)はとても特別な場所なので、またNYに来れたことがとても嬉しいです。来るたびに色々なカルチャーショックを受け、日本に帰りそれらを吸収し、またNYへ来て、ショックを受けの繰り返しです。そういう意味でもNYはとても大好きな街、そして自分がフルに活動できる場所です。そういう場所でこのような賞をもらえて、すごく嬉しいです。
―海外と日本の観客には反応の違いなどはありましたか?
観客と一緒に上映を観ていたのですが、NYのみならずヴェネチア映画祭でも感じたことなのですが、「なぜここで泣くの?」とか、「なぜここで笑うの?」と思うことは多々あります。
昨日も「ほとりの朔子」の上映があって、日本ではものすごくシリアスと思われがちなシーンなのに、NYの人たちはすごく笑っていました。それを見たときに、「ああ、すごく面白いな」と思いました。
でも、もしかしたら海外の映画を日本人が観て笑ったりするけど、その国の人にとってはものすごくシリアスなことなのかもしれないですよね。
それは映画だけではなく、ニュースを観ていても、そういう文化の違いに面白さを感じます。
―率直な感想などは、どなたからか聞きましたか?
はい。映画祭の観客の方から、「『ほとりの朔子』はとても美しかった」と言われました。この映画は日本の夏の美しさ、情緒がものすごく出ています。一瞬の煌めきというか。少女と少年の煌めきや若さ、そういうものがみずみずしく溢れている映画なので、海外の人から観ても「美しい」と感じてもらえたことは、ものすごく嬉しいです。
―作品によって印象がとても変わりますが、毎回その役になりきってプライベートを過ごすなど、何かこだわりはありますか?
最低限の役作りはしますが、基本的には現場で感じたままに自由に演じています。現場が終わったら、自分の時間だと思っているので、その役になりきってプライベートを過ごすことはしないですね。毎回違った役があり、自分が演じるというより、その役が映画の中で1人の人間として生きていることを意識します。
役者は髪型や肌の色、頭の上から足の先、手の先まで全部を役によって変化をさせることが面白いです。特に女性は、眉毛ひとつにしても形で全く印象が変わりますし、変化を付けやすいですから。
―今までの女優活動で、特に印象に残っていることはありますか?
それは、やはり今日上映をした「私の男」の監督、熊切監督との繋がりです。あまり特別という言葉で表現をしたくないのですが、とても特別で本当に本当に大切な作品です。そして、この特別な作品を私の大好きなNYで上映できたことが本当に幸せです。先日もモスクワ国際映画祭でグランプリを受賞し、浅野忠信さんは主演男優賞を受賞されました。海外でとても評価されている作品ですから、今後もたくさんの方々に観ていただきたいです。
―「私の男」の壮大な雪景色のシーンはとても印象的でした。大変寒かったのではないかと思います。ちなみに、寒いところでの撮影は大丈夫ですか?
寒いのは大丈夫なのですが、暑いのは苦手です。でも、NYの冬の方がもっと寒かった気がします。去年の11月と12月に滞在していたのですが、雪がたくさん降って本当にすごかったですね。
―今は女優業をされていますが、例えば監督業であったり、今後の目標はありますか?
私は女優として作品に関われることだけで幸せなので、やってみたいという思いはまったくないです。極端なことを言うと、女優でなくて、制作スタッフでもいいくらい。女優もすごく楽しいのですが、現場に行くことがすごく楽しくて、好きです。
あと、話は少し変わりますが、子どもがすごく好きです。友達の子どもや言葉をまだ発しない赤ちゃんなどを見ているといろんなインスピレーションを受けますね。「泣く」、「笑う」というところから始まり、いろんな感情や感覚、言葉を覚えていく。でも、その反面、大人になることはとても悲しいことだと感じます。だって、大人になると素直な感情、例えば「喜び」や「悲しみ」を隠して、冷静にならないといけない場面が増えてきますよね。それに対して、「悲しい事だ」とか、「自由でいい」とは思わないけど、赤ちゃんや子どもを見ているといろんな意味で面白いなと思いますね。そういったことも含め、子どもに面白い映画をたくん知ってもらいたい。そのために何ができるか考えています。そして、私の友達で子どもを産んで、さらに魅力的になった子達がたくさんいるので、母親になることも素敵だと思いますね。私の母のように、いつか母親になるのもいいなと思っています。
今年の9月に成人するので社会的な立場が変わることを自覚し始め、色々なことを考えています。やりたいことがたくさんあるので、少しずつ実行していくことが今後の目標ですね。
―子どもが好きなんですね。「私の男」で、二階堂さんの子供時代の「花」を演じた山田望叶ちゃんはどうでしたか?
彼女はこの作品が女優デビューでしたが、すごく才能のある子です。天才って言葉は、すごく無責任だと思いますけど、天才です。大人に混じって仕事をしている以上、私は子どもとして見ていませんが、彼女はちゃんと意志を持って演技をしていて素晴らしいと思います。
―海外で共演してみたい方はいらっしゃいますか?
はい、とにかくずっと公言していて一緒にやりたいと思っているのは、アミール・ナデリ監督です。彼はNYを拠点に長年活動をしていて、絶対に絶対にタッグを組んで映画を作りたいです。でも個人的に好きな役者さんは、マシュー・マコノヒーさん。あとスティーブ・ブシェミさんやエイドリアン・ブロディさんも本当に大好きです。今日の授賞式で、英語をちょっとだけでも話せたらいいなと考えている中で、「なぜNYが私にとってスペシャルかって、ブシェミもブロディもNYが故郷だからじゃない?」って気づいたんです。そういうこともあり、私にとってNYはとても素敵で特別な場所です。
―ところで、NYは今回で何度目なのですか?
3度目です。でも今回は初めて、夏を体験しました。いつも冬の滞在だったので、「夏はこんなに軽やかに歩ける街なんだ」と思いました。夏はカラっとしていて、人も活動的ですね。冬はものすごく重たくて、寒いですよね。晴れていることも少なくて、コートも重いし、暗くて。でもそこも含めて、冬も雰囲気があって好きです。
―今回の滞在で行きたい場所などはありますか?
今回は3泊5日しか滞在できないので行けませんが、本当はMoMAやブルックリン美術館に行きたいです。NYで一番ブルックリンが好きな場所です。今すぐ行きたいくらい。去年滞在していた時に、MoMAで草間彌生さんの絵の前にたくさんの人達が集まっていて、「日本の芸術は受け入れられているんだな」とすごく感動しました。ものすごくアートに敏感な街に身を置くと、自分を磨けて、感性が鋭くなれると思うので本当はもっと滞在したいです。
―では最後に、NYのファンへメッセージを
またNYに来た際は、よろしくお願いします。今回は素晴らしい機会をいただき、ありがとうございました。