前回と前々回に2013年の一般家庭における貯蓄現在高(あるいは金融資産)の変動と公的年金の給付抑制について書いたが、今回はその現状を踏まえてなぜ投資をする
べきかを書きたいと思う。
コラム第2回目をおさらいすると、2人以上の世帯の平均金融資産が4・9%上昇している中、中央値はたった2・2%しか上昇していないということが分かった。このことは一般的な世帯と比較的裕福な世帯の間で格差がより広がっているということである。そして、なぜこのように乖離(かいり)が広がってきてるかというと、株などの有価証券を多く持っている層と持っていない層で上昇に隔たりが生じているからである。これは金融資産の構成別では有価証券がアベノミクスによる株高で定期性預貯金など他の金融資産に比べて最大の上昇を見せたことに起因していて、今後もこの傾向は続いてい
くと思われる。
なぜなら、長らく続いたデフレでは通貨の価値が低く、有価証券を持っていることが最大限メリットになり得なかったが、日銀の金融緩和政策により今後インフレーションが加速した場合、有価証券が第一に上昇することになるからだ。これは日銀の異次元金融緩和以前から金融緩和を進めてき
た米国や英国で確認できる。
コラム第3回目では年金積立金管理運用(通称GPIF)について触れたが、来年度より公的年金の給付水準を減額する可能性が高い。そもそも、直近13年間でGPIF自体がたった年率で2・07%しか増えていない。なぜなら、GPIFの性格上株式など高リターンが期待できる資産への投資が他国の公的年金運用と比べ格段に少なく、また運用スタイル自体が熟達の資産運用者への委託の比率が低く、日経225などベンチマークを追うパッシブ運用が主体だからである。例えばニュージーランドドルの外貨預金が3%程度であり、日本国債よりも安全と格付けされているオーストラリア国債ですら3・5%の利回りを得られることを考
えると、その低さが分かるだろう。
これらの要素から見る限り、投資の重要性は今まで以上に高まっている。投資をしないことにより上記の金融資産の上昇率からも分かるとおり、相対的に貧しくなっていくのである。所得の格差が広がっており、年金も期待できないということは、このまま座して死ぬのを待つに等しい行為だろう。
であるから、次回のコラムではFXなど投資の種類や方法について書いていきたいと
思う。(在NYエコノミスト チングーン・ボロルマー)