米国で活躍する優秀な音楽家を表彰して国際的知名度向上に資する目的で毎年発表されている「アメリカ賞(The American Prize)」の本年度受賞者が10月28日に発表され、プロオーケストラ指揮部門の第3位にニューヨーク在住の指揮者・伊藤玲阿奈(れおな)さん(35)が選ばれた。これは日本人として初めての受賞となる。伊藤さんは合唱指揮部門でも最終ノミネートまで残ったが、こちらは惜しくも受賞を逃した。
同賞のノミネートには米国で活動する音楽家という条件だけで、年齢やキャリアによる制限が無いため、若手からベテランまで非常に多数が審査対象となっている。審査員長を務める作曲家で指揮者でもあるディビット・カッツ氏は「オーケストラ指揮と合唱指揮の2部門同時に最終ノミネートされること自体が非常に稀であり、これ自体誇りを持つに相応しい」と述べ、別の審査員は「情熱と技術を併せ持った指揮者。将来の音楽的向上に明るい期待を持てる」と評している。
伊藤玲阿奈さんは福岡県田川市出身で、祖父・母と三代続く指揮者の家系に生まれた。8歳でオーケストラ曲を作曲するなど才能を発揮したが、政治学を志し大学からワシントンへ留学、しかし最終的に指揮者の道を選び2008年にニューヨークでプロデビューした。現在までにカーネギーホールでも数回公演し、最近では米国のみならずヨーロッパでも、日本・クロアチア国交20周年記念コンサートを大統領府と実現させるなど、世界的な活動を行っている。
10月には「アートフォーピース」など国連との共同プロジェクトで著名な米国公益財団法人ハーモニーフォーピースより「ピースメッセンジャー」に任命され、世界平和デーコンサートで指揮。同財団が主催する、来年4月10日に東京芸術劇場で行われる平和コンサートにも音楽総監督として出演する。