NYファイナンシャル道場 「NY州の雇用法について ―雇用者と雇用主の権利」 

NYファイナンシャル道場
「NY州の雇用法について―雇用者と雇用主の権利」 

アクサ・アドバイザーズの郷田師範代が運営している「NYファイナンシャル道場」。毎回、様々な分野のプロフェッショナルを迎えセミナーを行なっている。
転職が当たり前の米国では、雇用関係は比較的自由だが、その反面厳しい差別規制があり、その違いに戸惑う人も多いという。今回のセミナーは、雇う側も雇われる側も知っておきたい雇用法について、弁護士の飯島真由美先生が授業を行なった。

<飯島真由美弁護士> ニューヨーク州弁護士、ニューヨーク市立大学(CUNY)ロースクール卒業。法政大学文学部卒業後、CUNYロースクールに進学。2004年に卒業後、みずほ銀行コンプライアンス部門を経て、10年に独立し、飯島真由美弁護士事務所を設立。専門分野は雇用法の他、会社法、一般訴訟、家庭法、相続一般など。

お題①:NY州の雇用法について学ぶ―雇用者と雇用主の権利

まずは、雇用者を守る法律は次のようなものがあるニュージャージー州やコネチカット州には、独自の法律があるという。

★最低賃金法(Minimum Wage)
★有給病欠(Paid Sick Leave)
★自分や家族が病気をした場合に休暇を取る事ができる(Family and Medical Leave Act)
★残業代に関するもの
★人種、肌の色、宗教、国籍、性別、年齢などによる差別の禁止
★障害者を守るもの(Americans with Disabilities Act)など

日本との大きな違いとしては①雇用主は、雇用者をどんな理由でも、いつでも解雇できる②待遇を予告無しに変更することが可能(但し、契約によって雇用期間や解雇の理由が決められている場合を除く。また、不当な差別や報復措置による解雇は違法)しかし、この違法に当たるものに、「この人が嫌いだ」という理由は含まれないので、「気に食わない人だ」という理由で解雇ができるのだ(ただし、気に食わない理由が不当な差別や報復措置である場合を除く)
連邦法による2014年10月現在の最低賃金は、一般が一時間当たり7・25ドル、チップベースで働く人達は2・13ドル。NY州法による最低賃金は一般で時給8ドル、チップベースは5ドル。年々、少しずつ金額は上がっており、2014年12月31日には一般は8・75ドルに、2015年12月31日には9ドルに定められる予定だという。この法律は、フリーランスやコンサルタントなど、〝Independent Contractor〟には適用されず、あくまで自分の契約書内容によるというしかし、一般企業のインターンには一定の規定を満たさない限り適用されるとし、無給でインターンをやっている日本人もいると思うが、規定を満たしていない場合は適用されるという。無給のインターンの場合は、無給であることを予め書面にて知らせる必要があるという。
その他、NY市における有給病欠を定める法律(組織の規模により異なる)や残業代に関する規定の話を聞いたNon-Exemptの雇用者は、40時間以上働いた時間数すべてに対して通常の時間給の1・5倍の報酬を要求できる

熱心にノートをとる参加者

お題②:現在、米国において訴訟が多い雇用法について

残業代の出ないExempt Employeeについては、連邦法とNY州法により規定が決まっている。さまざまなカテゴリーがあるが、ここでは2つを紹介。最低週給やステータスを満たした上でどこかのカテゴリーに属すると、40時間以上労働しても残業代は払われない。

★Executive Employee
―役職はマネージャー。週給(手当含め)543・75ドル以上であること
―主な業務が会社の管理職業務、あるいは慣例上、管理職的な立場にあること など
★Administrative Employee
―週給(手当含め)543・75ドル以上であること
―主な業務はオフィス業務、あるいは野外作業であるが手動によらず、経営方針や会社運営に直接関わっていること
―慣例、または定期的に、業務上で独立した判断を行なうこと など

 

まとめ

契約書を交わしていたとしても、それが100%ではなく、交渉の余地があるという。「この人が嫌いだ」という理由は、正当な解雇理由になるのは驚きだった。これは差別にならないという。米国では、レジメに年齢を記載する必要はなく、年齢を採用の判断基準にするのは差別にあたるという。また、外国人に対する差別ではないかとして、英会話のアクセントを基に訴訟があったこともあるという。
日本の会社であっても、米国に会社がある場合は〝米国の雇用法が適用される〟など、雇用法の下、雇用者は守られていることがわかった。しかし、さまざまな法律や事例があるが、グレー部分も多数あるという。
飯島先生のセミナーは、易しい言葉で説明をしてくれ、初心者でも理解しやすく安心できる。また、身近な事例も話してくれるので、現実的に想像しやすい。
疑問や不満があれば一人で悩む前に、飯島先生に相談してみよう。先生は親身に相談にのってくれる。