去年10月、ロンドンを拠点に活動するストリート・アーティストのバンクシーがニューヨーク市に一カ月滞在し、市内各地の建物外壁や塀などに「グラフィティ(落書き)」アートを残していくと発表した。しかし、当時の市長であったブルーム・バーグ氏は、バンクシーの作品をアートではなく、通常の落書きと同様に違法行為と判断すると発表。ここから、バンクシー、警察、そしてバンクシーハンター(バンクシーのファン)たちの物語が始まる。
バンクシーは、作品をオンラインで毎日アップデートする。数時間後に、警察により作品が消されてしまうことを知っているバンクシーハンターは、住所は告知されていないグラフィティをソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)をフル活用し情報交換、必至に街中を探し回る。運がよければ見ることができるが、警察に先を越されれば、見ることはできない。また、バンクシーをよく思っていないアーティストにより、作品を汚されてしまうこともある。しかし、それをバンクシーハンターが綺麗に掃除する場面もあり、いかにファンに愛されているかが感じられる。
バンクシーの風刺の効いた痛快でユーモラスなグラフィティは、作者本人のまったく知らないところで高値で販売されている。幸運にもバンクシーに作品を“残されて”しまったビルなどのオーナーは、その部分を解体、切断。その後、アートディーラーが買い付け、市場に出回る。
グラフィティーは、70年代のニューヨークで生まれたストリートカルチャーだ。クイーンズ区のグラフィティの聖地として知られる「ファイブ・ポインツ」も高級アパート建設のために、惜しまれながら無くなってしまった。作品中には同所のキュレーターやジャーナリスト、アーティストが出演し、バンクシー及びグラフィティー、そしてニューヨークのストリートカルチャーを語るストーリー展開も興味深い。
そして31日目、バンクシーはどんな作品をNY市に残して行くのだろうか? 捕まってしまうのか? 最後の最後まで、期待を裏切らないバンクシーのユーモラスで風刺のきいた作品とは。
知れば知るほど好きになる世界中の人を魅了してやまないニューヨークという街を舞台に、世界中の人を熱狂させる謎に満ちたアーティストのドキュメンタリーは一見の価値あり。
映画祭「DOC NYC」開催
【日時】11月14日(金) 午後7時〜
【場所】SVA Theatre:333 W 23rd st (bet 8th & 9th Ave)
【料金】一般:17ドル/シニア・子ども:15ドル/会員:14ドル
※この他、オールパスなどもある
【Web】www.docnyc.net
今回で5回目となるニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭「DOC NYC」が、今年も開催される。市内3カ所を会場に開催される同イベントは、米国最大のドキュメンタリー映画祭であり、153の映画上映と200を越える制作スタッフを含めたスペシャルゲストが参加する。