先月行われた金融政策決定会合で、日銀は追加の金融緩和策を決め、マーケットに大きなサプライズを起こしました。日銀発表によると、今後マネタリーベースの増加ペースを現在の年間60~70兆円から、10~20兆円増やし、長期国債の買い入れも30兆円増やして年間80兆円とし、さらにETFとJ―REIT(不動産投資信託)も年間3兆円と900億円それぞれ買い入れるという。
GDP発表前の時期に突如追加緩和を決定したのは、消費増税の影響が予想以上に大きく、目標としているインフレと経済成長の達成が困難になっているからです。実際、その数週間後に発表された7〜9月期のGDPは予想より遥かに悪く、二期連続マイナスとなり公式に日本経済は景気後退へと入りました。
米国でQE(量的緩和)が終了し、利上げ時期を見定めている中、対照的に日銀を含め世界各国が自国の不況とデフレ回避のため金融緩和に走り、結果として自国通貨安に誘導しています。ECBは今年マイナス金利を導入し、更にカバード債購入を10月に開始しました。韓国銀行も先月政策金利を2%に引き下げ、中国は経済成長の鈍化の真っ只中、人民元高抑制のため為替介入を2月から実施し、豪州ではオーストラリア準備銀行が記録的な低金利政策を続けています。
日銀のこの決定により、今まで取り立て日銀の金融緩和政策に言及してこなかった各国もいずれ問題視し始めるでしょう。韓国がG20の場で日本の為替政策を批判したことも、その一例です。現在は日本の経済再建のため、金融緩和政策も黙認されている状況ですが、日本からのデフレの輸出がこのまま拡大し、長期間続くと、各国の自国通貨安政策が更に激化し、通貨戦争へと発展していく可能性があります。特に、中国と韓国の両国は貿易相手として、また貿易競合相手としても、円安による影響を大きく受けるため、心中穏やかではないでしょう。中国経済の鈍化と人民元の価値上昇が続いている現在、中国人民銀行は対抗策として、今年2月以来の為替介入を再び実施することも考えられます。そうなっていくと、各国間のデフレのババ抜きゲームが始まるでしょう。(在NYエコノミスト チングーン・ボロルマー : l.cbolormaa@gmail.com)
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