悪者でも英雄でもない エボラ感染医師が過去語る

 ニューヨーク州初、そして現在に至るまで唯一のエボラ患者であるクレイグ・スペンサー医師(33)が25日、学会誌にエッセイを発表した。
 同医師は随筆の中で、「入院後は誤った認識のもと公衆を危険にさらしたと非難され、回復後はヒーローのように祭り上げられた」と当時の扱いに反論する論調で今回の経験を振り返っている。「23日以前は症状は何もなかったが、その後に疲労感を感じたのはギニアでの活動と長旅の疲れによるものだ」と述べている。
 発症後、西アフリカでエボラ患者の治療にあたった医療関係者は、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事とニュージャージー州のクリス・クリスティ知事が定めた、帰国後症状がなくても一定期間隔離される規則に関して「人道的貢献を行った尊敬すべき者が理不尽な扱いを受けている」と非難した。一方で、エボラ患者の治療については「危険を伴う過酷な任務だが、精神が浄化されるような経験でもあった」と語っている。
 スペンサー医師は、コロンビア大学メディカルセンターの救急部門で担当医を勤め、「国境なき医師団」の活動でギニアへ派遣されエボラ熱に感染した患者の治療にあたっていた。帰国後の10月23日に発熱を訴えたためベルビュー病院へ運ばれたが、ニューヨーク市の発表は「21日以降疲労感があった」と誤って報道されていた。また、クオモ知事の「症状があるにも関わらず外出をするとは注意不足だ」とするコメントをはじめ、行動を非難する声が上がっていた。