このほど内分泌学の研究機関、Endocrine Societyが開いた集会で睡眠と健康に関する新たな研究結果が発表された。この研究によると、1日30分睡眠時間が減るだけで、からだの代謝機能が下がり肥満をもたらすという。
同研究を行った、ワイル・コーネル医科大学教授で医学博士のシャーラッド・タヘリ氏のチームは、最近第2型の糖尿病と診断された522人の患者を集め、ランダムに①通常治療②運動療法③ダイエット&運動療法、の3つのグループに分けた。実験を始める前に患者たちの身長、体重、ウエスト周り、空腹時の血液サンプルからインスリン感応性を測定。患者は「平日の必要睡眠時間と実際の睡眠時間の差(Sleep Debt:以下SD)」を記録するため、週間睡眠時間の記録を行った。
この実験によると、SDが無かった患者に比べ、必要な睡眠時間の70%ほどしか眠れていなかった患者は、より肥満値が上がっていることがわかった。また実験を6カ月続けると、SDは明らかに肥満とインスリン抵抗性に関係していることがわかり、さらに12カ月続けた結果、毎日必要な睡眠時間が30分削られるだけで、肥満率は17%、インスリン抵抗性は39%とそれぞれ上昇した。
糖尿病と肥満はインスリン抵抗性に関係する2大代謝性疾患であり、これらは高血圧や高コレステロールなどの心血管代謝の危険因子となり、メタボリック・シンドローム(内臓脂肪型肥満)を引き起こす原因となる。
この結果を受けてタヘリ氏は、「実験の結果は睡眠不足は付加的だという説をさらに強くするものであり、また代謝にマイナスの影響を与える」とし、また「現代人にとって睡眠不足は珍しくないが、代謝の重要性は最近になって注目されてきた。われわれの研究結果は、SDをなくすことで、肥満や代謝にポジティブな影響をもたらすことが判明した」と発表している。
National Sleep Foundation(NSF)は今年2月、年齢別の最適睡眠時間を発表。その中で、18~25歳は7~9時間、26~64歳も同様、そして65歳以上は7~8時間の睡眠を推奨している。
毎日できるだけ理想的な睡眠時間を確保するために、いつもより少し早くベッドに入ってみよう。夜更かしが続いている人は要注意!(D)
※参考
www.endocrine.org
www.medicaldaily.com