TAX SPECIALIST羽山 徹の税金をはじめとしたお金の話あれこれ Vol.5 会社員並びに個人の事業主が利用できる 「退職後用積立口座(Retirement Plan)」パート①

 問:現役時代に、退職後に備えて会社から受け取る給与の一部を積み立てながら運用していく投資口座にはどのような
種類がありますか?

解答:会社が社員用に導入している、給与の一部を積み立てていく退職後用積立口座、Retirement Planの中で一般的なのが、「401(k) Plan」と呼ばれるものです。同じ内容でも、「非営利団体」が導入している場合は、「403(b) Plan」と呼ばれます。他にも中小企業対象用(参加者100名未満)の「Simple IRA」もあります。401(k)/403(b)への年間最高積立額は、2015年度は1万8000ドル(尚、50歳以上は6000ドル増しの24000ドル)です。Simple IRAの2015年度最高積立額は、1万2500ドル(尚、50歳以上は3000ドル増しの1万
5500ドル)です。
 これらすべてに共通している主な特徴は①積み立てに回された給与の一部は、その年の課税の対象から外されます。従って、その年に課税される給与額は、グロスの給与額から積立額を差し引いた、残りの金額です。即ち、積立をすればするほど節税効果が上がります。ただし、多く積立をするとその分「手取りの給与額」が減りますので、バランスを考慮した計画的積立が重要です。②これらの口座で発生した運用益(配当金、利子、売却益など)は、繰延課税制度(Deferred Tax / Tax Deferral)が適用されます。従って、現役時代(退職して引き出しをするまで)は、毎年その額に関わらず課税されない仕組みになっています。③退職する前の、特に59・5歳になる前に口座から現金を引き出すと、所得税はもちろんの事、加えて引き出し額の10%分のペナルティをIRSに払うことになります。④401(k)/401(b)に関して、会社側が社員の積立額に応じて追加で積み立ててくれる、「Matching Program」 は会社の任意ですので、かならずセットで導入されるとは限りません。当プログラムが導入されると、会社員の給与の一部に加えて会社が追加で各人の口座に別途積立をしてくれます。会社はその金額を経費として損金
算入します。

問:会社を立ち上げない形で、個人の事業主(自営業者)でビジネスを展開しています。私のような、いわゆる「Schedule
C Filer」が利用できる、退職後用積立口座はありますか? 自分に対して給与
は支払っていません。

解答:一番一般的なのは、「Self-Employ-
ment SEP IRA」です。この積立口座に対する積立額は給与ではなく、事業からの純益(Net Profit)がそれに当たります。つまり、収入から諸経費を差し引いた残りがプラスになる場合は、S/E SEP IRA に積立が出来ます。純損(Net Loss)の場合は積立が出来ません。さらに、純損の場合には、米国公的年金の掛金である、Social Security Tax (自営業者が払うこの税を、特にSelf-employment Taxと呼び、その額は純益の約15%強)も払え(積み立てられ)ません。S/E SEP IRAへの年間積立額の最高額は、2015年度は、5万3000ドルか、純益からS/E Taxの半額を差し引いた残りの額(Net Earnings from Self-employment)の20%分、どちらか小さい方の金額、となります。年齢による(50歳未満と以上)最
高額の違いはありません。

 次回は、退職後用積立口座パート②を
ご紹介します。


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羽山 徹
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