今実際に何がニューヨークのアートワールドで起きているかをお知らせするこのコーナー、今月は盛りだくさんです! 今月のはじめ、ついにホイットニー美術館がハイライン沿いに新しい建物をオープンしました。レンゾ・ピアノによる広々としたスペースはハイラインからそのまま続くように建てられ、よく聞かれる感想としては美術評論家のジェリー・ソルツ氏も言うように「美術館のもっている素晴らしいコレクションそのものを見せることを重視した点でスペース拡張も展覧会も高評価」となっている。
また、業界を驚愕させたのが、11日の大手オークションハウス、クリスティーズでの現代美術イブニング・セール。何と一晩で706ミリオンドル(約841億円)の売り上げを記録! ピカソが1億7936万5000ドル(約214億円)でオークション史上最高落札価格の記録を更新し、さらにジャコメッティが1億4128万5000ドル(約168億円)だったことから一億ドル級が二点も出るという驚異的なセール。両作品とも買い手はおそらくアジア人ではないコレクターによる電話入札であることが、公表されているオンライン動画からわかるのも興味深い。
こういった大型オークションでコレクターたちがニューヨークを訪れているタイミングでもある14〜17日は、現代美術アートフェアのフリーズが開催されるなど、注目度の高い展覧会が多い。その中で日本人現代美術作家の台頭が見られるのは嬉しい傾向で、ソロ展がスタートしたばかりのMoMAでのオノ・ヨーコ、大御所ギャラリーでの二度目の展示を開催中の草間彌生、終わったばかりではあるがグッゲンハイム美術館での河原 温の大規模なソロ展も記憶に新しい。ちょうど先日、たくさんのコンテンポラリー写真系の団体が共同で開催した大掛かりな「シャシン・シンポジウム」と関連プログラムがあちこちで開催されるなど、ニューヨークでの戦後日本美術全般への興味が伺える。
そして季節の変わり目と共にジャパン・ソサエティーギャラリーでも、展覧会後半で46作品を入れ替え、新しい猫たちが皆様をお出迎えするべく、数々のイベントを企画している。関連プロジェクトの目玉の一つが、当館の向かいにお目見えしたセバスチャン増田氏による3メートルのハロー・キティ! この作品は、5年後の東京オリンピックで展示予定のさらに大きな作品の一部となる。是非「お江戸猫めぐり」展へお越しの際にご覧ください!
しば まさこ
ジャパン・ソサエティーのギャラリー勤務。1年の留学に来ただけのはずのNY在住暦は既に14年。オークションハウスなどのアート系&それ以外の仕事を経て、現職では日本美術の普及に関わる様々な活動を行っている。