TAX SPECIALIST羽山 徹の税金をはじめとしたお金の話あれこれ Vol.10 会社員並びに個人の事業主が利用できる 「退職後用積立口座(Retirement Plan)」パート⑥

問21:T―IRAからRoth IRAへ「変換(Conversion)」する際、今まで税金を払ってきていない積立額と運用益なので、引き出し時に引き出し全額が課税対象となるT―IRA口座残高全額が、積立時に税金を払ってあるため、引き出し時には税金を払う必要のないRoth IRAの積立額に名称変更となり、なおかつ、将来2つの条件を同時に満たして引き出したら、非課税となるRoth IRAの運用益になると、国税としてはまったく税金を取ることができなくなるのですね。

解答:ですので、まず、T―IRA口座からRoth IRA口座に変換したい金額(口座残高全額または一部)は、その年度の確定申告書上の課税対象の収入と認識されて、所得税を支払うことになります。すなわち、Roth IRAに変換するT―IRAの全額(積立額+運用益)が、Roth IRAの「積立額:税金を払ってある」になるということです。

問22:まとめると、この変換で、T―IRAにあった口座残高すべてを課税対象所得にして税金を払うことで、Roth IRAの「積立額:税金が払ってある」にして、その後5年以上経ってから、そして年齢が59・5歳に達した上で、増えた運用益を引き出す時に、先の2つの条件が満たされているので、非課税となるわけですね。この変換に関して他の注意点はありますか?

解答:変換した時点でその人が59・5歳の年齢に達していなくても、例の「引き出し額の10%のペナルティ」を支払う必要はありません。ご安心ください。「変換」は「引き出し」ではないからです。但し、増えた税の負担分を確定申告書でIRSに支払う際に、変換されるべき額の一部を使用する(この結果、新Roth IRA口座の残高は、変換される筈の金額から税負担分を差し引いた額となる)と、その税負担分は、T―IRA口座からの「引き出し」と認識されます。従って、本人が59・5歳に達していないと、変換総額に対する所得税に加え、税の負担分(変換額の一部で引出額)の10%のペナルティーを支払わなければなりません。お気を付けください。もちろん、59・5歳に達してからは、税の負担分を差し引いてもペナルティだけは避けることはできます。

問23:「変換」額が多いと税の負担が増える、ということであれば、T―IRA口座残高を一度に「変換」せずに、数年に分けて「変換」することで、税の負担を緩和できませんか?

解答:それは可能です。但し、T―IRA口座を運用している金融商品によっては、一度には変換可能でも、複数回に分けてRoth IRAに「変換」ができない場合があります(個人年金(Annuity)の場合は特に)ので、必ず事前にご自分のT―IRA口座を開けている金融機関に確認することが重要です。(次回に続く)


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羽山 徹
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