問24:T―IRA口座残高をRoth IRA口座へ「変換」する時、何事も思い込みは危険ですね。先ず確認してからやります。Roth IRAに興味を持ったのですが、他にもT―IRAとは違った特徴点はあるのですか?
解答:もう既にRoth IRAに興味を持たれたとのことですが、Roth IRAにはさらに興味深い特徴が備わっています。それは、Roth IRA独自の引き出しルールです。Roth IRA口座からお金を引き出す時には、「先入れ先出し:First-in, First-out」ルールが適用されます。すなわち、Roth IRA口座からお金を「引き出しする(Distribution/Withdrawal)」と、まず①Roth IRA口座に先に入れたものから先に引き出され、②その①が全部無くなると、まだ残っているものが次に引き出されていく、というものです。
問25:Roth IRA口座に「先に入れたもの(First-in)」とは何を指すのですか?
解答:Roth IRA口座を開設して、まずその口座に何を入れるか、(または口座に何が入ってくるか)と言えば、給与の一部である「積立額:Contribution」ですね。従って、First-inとは積立額のことです。
問26:なるほど。では、積立額の他にそもそも何が口座に残っているのですか?
解答:Roth IRA口座だけではなく、T―IRA口座、401(k)口座でも、投資口座(Investment Account)の口座残高(Account Balance/Value)は、「二つ」の構成要素の合計から成り立っています。すなわち、積立額(または元本:First-in)と、運用されて生じた運用益(Growth/Earnings)です。この運用益のことを、「Last-in:後入れ」とも呼びます。これら二つの合計額が、毎日の口座の残高となります。
問27:では、Roth IRA口座からお金を引き出す場合、まず積立額から徐々に引き出されていって、いよいよすべての積立額が無くなったら、次に残っている運用益が引き出される、ということですね?
解答:その通りです。ではこのルールの「画期的」な点を、具体例で説明しましょう。201X年、Aさん(50歳)は、15年前に開設して以来積み立ててきた、Roth IRA口座から2万ドルを「引き出し」ました。その時点での口座残高は10万ドルでした。内訳は、積立額合計が6万5000ドルで運用益合計が3万5000ドルの、計10万です。さて、Aさんがこの年度に引き出した2万ドルのうち、確定申告書で課税対象となる額はいくらでしょうか? また早期引出(59・5歳未満引出)に適用される「10%のペナルティ額」はいくらでしょうか?
問28:以前にRoth IRA口座の運用益の引き出しに関して、特別のルールがあると説明を受けました。引出時に「59・5歳に達していて、なおかつ口座開設5年以上経過している」と、引き出した運用益は本来課税されるべき(繰延課税制度が適用されてきたので)なのに非課税扱いとなる、というものでした。Aさんは引出時は50歳で、59・5歳に達していません。従って、2万の10%にあたる2000ドルがペナルティ額となるのですか?
解答:ご安心ください、ペナルティは発生しません。もう一度、Roth IRA口座の引出に関する基本ルールに戻ってみましょう。引き出しをすると、「First-in, First-out」が適用され、口座に含まれている、運用益ではなく、積立額から先に引き出されていきます。従って、引き出した2万ドルは、積立総額6万5000ドルの一部であり、全額積立額です。次に、この引き出された積立額2万ドルのうち、いくらが課税の対象となるかを考えてみましょう。これを理解することが答えにつながる重要な鍵となります。(次回に続く)
Financial Advisor / Tax Specialist
羽山 徹
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