アメリカの大学合格までのプロセス Satori College Planning(2)

 前回5月号に引き続き、サトリ・カレッジプランニング代表で、カレッジコンサルタントの伴里美氏による、アメリカ大学進学準備のアドバイス。今回は願書提出におけるアドバイスを紹介する。

変わる選抜の評価

 これまでのテストスコア重視による選抜評価に変化の兆しが起きている。テストスコアを提出しなくてよい大学が増えているのだ。しかし依然として多数が受けるSATは、2016年度3月より3科目からMathとReading and Writingの2科目になりエッセイは任意となる。ACTはSATに比べ、高校のカリキュラムに近い内容のテストで、English、Reading、Math、Scienceの4科目に加えWritingが任意提出であるが、新しいSATはそれにより近い内容になる。一般にはどちらかのテストを何度か受けるが、最近SATよりACTを選ぶ生徒が増えてきたという。
 「10年生の秋に両方のプレテストを受けて、どちらが自分に合うかを検討します。両方得意であれば両方のスコアを出すことも可能です。」と伴氏。「高校の成績とテストスコアはもちろん大事ですが、近年はエッセイの比重が上がっています。」

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パーソナルエッセイで自分を表現

 前回述べたように、大学が見るのは、今後どれだけその学生が伸びるかの将来性だ。スコアだけでは将来性は計れない。特にトップレベルの大学では満点近くの生徒が目白押しだ。その中でいかに自分がスペシャルであるかを表現する場がエッセイになる。「エッセイはテストや成績ではわからない部分を出す場所です」と伴氏。
 コモンアプリケーションでは毎年春に5問エッセイのテーマが発表され、その中から書きたいテーマを選ぶ。そこから数ヶ月かけて完成させる生徒もいるそうだ。
 「難しい言葉を使う必要はありません。大事なのは受験生の内面が出ること。エッセイを読んだ大学側が、この人物に会ってみたい、大学でどう貢献してくれるのか、と期待する気持ちになる、それが重要です」と伴氏は続ける。「書く内容は絞ること。エッセイで一番難しいのが何を書くのかを決めることかもしれません。」

お話を伺った伴里美氏

顔と声の見えるコミュニケーション

 自分がいかにその大学に興味があり、入学したいという熱烈な思いを伝えることも重要だ。
 「大学から派遣された人の説明会、遠方の場合長期休暇を利用しての大学見学、大学同窓生との面会や説明会など、できるだけ出席します。そのような機会に会った人、キャンパスで話した学生などのフルネームは記録します。後日大学との連絡や、テーマによってはエッセイに書くこともできます。本当に行きたい大学であれば、リサーチ中に質問事項は色々出てくるはずです。自発的に生徒自身が大学のアドミッションオフィスにメールで問い合わせをすることも、相手に自分の関心度の強さを伝えることになり評価になります。」
 大学のフェイスブックに足跡を残すなど、今はSNSを通じてコンタクトを作る方法は豊富だ。どんなことでも大学とのコネクションは重要だと説く。

用意周到に行動は早く

 願書提出には、早期に願書を提出して早期に結果を受け取るアーリー・アドミッションと、一般締め切りがある。早期提出には合格したら必ず入学を約束するアーリー・デシジョンと、入学決定を一般の結果が出るまで保留できるアーリー・アクションがあり、大学により複数校への提出を許さないなど細かな違いがある。それぞれに利点と不利な点があるので、各家庭でどのように願書提出をするかよく検討する。
 ファイナンシャル・エイドには①グラント/奨学金②学生ローン ③ワークスタディーと、大きくわけて三つの形がある。大学に通学するために必要な総額、Cost of Attendance=COA(学費や寮費、遠方の場合の飛行機代)から各家庭で負担できる額、Expected Family Contribution=EFCを引いた額がFinancial Need となり、各大学のウエブサイトなどでその計算式がある。(表1)
 各大学からの合格通知と共に、エイドの金額決定も知らされ、この時点で初めて家庭が負担すべき学費がわかることになる。
 「ここから家族会議で、最終的に行く大学を決定することになります。エイドのオファーが不満であれば、再検討してもらうように手紙を書きます。またアーリー・アドミッションから一般願書に回されることもありますが、その場合も引き続きその大学に是非入りたいという手紙を出します。願書提出後に、賞を取ったり、目を引く活動があった場合はそれを、また早期出願時には出ていなかった、シニア前期の成績表も学校から送ってもらいます。このようなエッセイの準備、願書提出、アピールなどは、早めに動くことを勧めます。迅速な動きは、大学側に自分の熱心さを示すことにもなります。」

カレッジコンサルタントの仕事

 今回、アメリカの大学進学のプロセスのおおよその概要を紹介したが、やることはまだまだある。「特に競争率の激しいトップ校を狙う場合は大変です。お金のある家庭はコンサルタントを雇えますが、それは一部です。最終的にはそれができない家庭や生徒のために役に立ちたいです。今はまだ無理でも、将来の夢ですね。」と伴氏。
 低所得家庭の子どもへの進学サポートは非営利団体などが存在するが、それもまた一部。更に知識を深めようと、ファイナンシャル・エイドのカウンセラーのコースを資格を取るためUCLAで修了した伴氏。今後も情報も発信してゆく予定だ。(文=河原その子)

アメリカ大学お役立ちサイト/書籍

大学のリサーチ(書籍)
Fiske Guide to College/Publisher: Sourcebooks
Insider’s Guide to College/Publisher: St. Martin’s Griffin
College Handbook/Publisher: College Board

大学のリサーチ(ウエブサイト)
The College Board www.bigfuture.collegeboard.org
The Princeton Review www.princetonreview.com
U.S. News & World Report www.usnews.com

願書提出
コモンアプリケーション www.commonapp.org

ファイナンシャル・エイド
CSS/Profile(私立大学用エイド) www.collegeboard.org
FAFSA (連邦政府のエイド) www.fafsa.ed.gov
スカラシップ情報サイト www.fastweb.com
Net Price Calculator (必要なエイドの計算式) www.finaid.org