Executor「遺言執行者」は、遺産管理などの目的のために、原則として遺言者により遺言中で指定され、Surrogate’s Court検認後見裁判所での遺書の検認を経て、またAdministrator「遺産管理者」は、Intestate無遺言相続の場合に、申請を経て、裁判所に任命されます。法律用語ではFiduciary「受認者」、つまり「特別な信頼を託される責務のために任命される」人を指します。受認者は、エステートの債権者や受益者等、故人の財産(Estate エステート)の決済をするための義務が果たされない場合に害を被る関係者に対して、責任を負います。
遺言がある場合、遺書を検認後見裁判所に提示することから手続(「Probate検認」)が始まります。遺言がない場合は、遺産管理者として任命されようとする申請者が、裁判所に関連書類を提出します。関連書類の審査を経て、検認裁判官が、遺言執行者・遺産管理者を正式に任命する遺言執行状・遺産管理状を発行します。遺言執行状・遺産管理状は、受認者の法的権限を証する書類で、受認者はこれをもって故人の財産の管理を開始します。申請書類の作成や裁判所への出廷などの仕事は、雇用される弁護士がエステートを代理して行うことができます。
受認者は、段階的にさまざまな行為を行っていきます。受認者の義務の第一は、財産を保護し、財産が慎重賢明に投資されるようにすることです。そして、エステート財産を特定、回収、整理、確保します。特に大事なのは、エステートが損害を被ることのないように、動産・不動産の保険を確保することです。
次に、受認者は、エステートが法律上どの税金申告をしなければならないか確定しなければなりません。それには、故人の最後の所得税申告書、故人の死後エステートに所得があればエステートの所得税申告書、そして、総財産の価額により(連邦は総財産が543万ドル(2015年)を超える場合)連邦遺産税の申告、(ニューヨーク州は総財産が312・5万ドル(15年4月1日〜16年3月31日まで)を超える場合)ニューヨーク州遺産税の申告などがあります。
受認者は、故人の葬儀費用・遺産管理費用・各種税金・負債を支払うため、賢明な投資方法によって、エステートに使える現金があるように投資しなければなりません。流動資産管理も重要です。エステートの資金が足りなければ、財産の売却や借金により、税金や債権者、エステート管理費用の支払等を含む現金の必要性を満たす必要があります。
エステート管理の最終段階は、検認財産の最終決済です。エステート債務の通知期間が経過し、各種税金の申告、負債・経費の支払後、相続人へ財産を分配します。
※上述はあくまでも一般的な説明であり、個々のケースによって手続な どは異なりますので、必ず法律専門家に相談するようお願いします。
滝川玲子(たきかわ・れいこ)
ウインデルズ・マークス・レーン・アンド・ミッテンドルフ法律事務所パートナー、ニューヨーク州弁護士。上智大学外国語学部英語学科、同法学部国際関係法学科卒業後渡米、ニューヨーク大学ロースクール法学修士。日米両国の弁護士事務所の他、日本企業での勤務経験もある。総合法律事務所のニューヨークオフィスにおいて、遺書・遺産に関する法律を中心に、日米両国のクライアントをもつ。現在JAAにおいて、2ヵ月に一度の無料法律相談を担当。
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