ニューヨークは、さまざまな音にあふれている街だ。サイレン、アラーム、アイスクリームを売る陽気な音楽。そして、その一部を担うのは、独特な匂いと大きな音を立てて、今日も街を駆け抜けるゴミの清掃車。現在、ニューヨークで廃棄される家庭ゴミは、日に1万1000トンを超える。
ゴミは捨てた人にとってはゴミでも、とある人にはお宝なこともある。現金や高級ブランドなどは文字通りの宝だろうが、捨てられたゴミから分かるのは、ニューヨークという街とニューヨーカーの生活だという。ニューヨーク大学のロビン・ネグル教授は、それらを知るために清掃局員として従事し、著書「PICKING UP」を上梓した。本の中で、「ニューヨークは〝使い捨て〟にあふれている」と話す。彼女とゴミが雄弁に語るのは、ゴミの向こう側に見える〝彼ら〟の重要性である。
現在およそ800万人いるニューヨーカーに対し、清掃局員は1万人ほどしかいない。また、清掃局員という職務は警察官や消防士よりも危険で、けがをしたり殉職する率はおよそ3倍になるという。それでも給料はそれらには及ばない。清掃局員の平均年収は3万6000ドル(約380万円)で、年収が倍になる平均職務期間は5年半になるという。過酷な職のため、離職率も高い。だけれどゴミは絶え間なく捨てられていく。彼らはどんなに寒い日も暑い日も、お祭りやデモが行われた後も、ゴミを回収し続ける。〝彼ら〟がストップすれば、ニューヨークは大変なことになる。
逆をたとれば、消費者のわれわれにとって見えてくるのは〝生活に本当に必要なもの〟。あなたの生活とゴミの延長線上に、また別の人生のドラマがある。