進化した寿司で日本食アピール 農水省主催「WASHOKU lunch」

 マンハッタン区アッパーイーストサイドの国際連合日本政府代表部大使公邸で27日、農林水産省主催のイベント、「WASHOKU lunch ~The SUSHI~ Preview of WASHOKU Reception」が行われた。
 米国をはじめ世界中で〝健康食〟として広まる和食の魅力を、幅広い「寿司」の可能性を通して、ニューヨークから世界に発信するための同イベントでは、メインシェフとしてモダンアメリカンレストラン「PATINASTELLA Tokyo」で料理長を務める杉浦仁志氏が、またゲストシェフに銀座長峰代表取締役の長島博氏が出演し、寿司作りのデモンストレーションと解説を行った。
 創作料理を得意とする杉浦氏がこの日のデモンストレーションで見せたのは、鰻を使った創作寿司「祝花」。薄く切ったにんじんや大根を花びらに見立てた目にも鮮やかな寿司に、ニューヨークでは珍しい有馬山椒を加え、割烹やフレンチも経験した杉浦氏ならではの繊細な寿司を披露した。一方、長島氏は秋なすの握り寿司を用意。本来なすは夏の野菜として知られるが、秋なすの旨さや「何事をもなす」と縁起ものであること、また酢の登場が寿司に大きな変化をもたらし、魚以外も寿司にするようになったことなど、江戸前寿司の歴史にも触れた。

デモンストレーションを行う杉浦氏。1つの寿司に40枚の花びらをのせた「祝花」のほかに、燻製醤油でいただく和牛ローストビーフの寿司やトマトソースを使った寿司セビーチェなど、数種類が提供された


 両者が手掛けた寿司はともに、伝統的な日本の寿司に新しいアイデアを加え進化させるという点で共通しており、長島氏は「いつの時代も温故知新。その時代で進化し、新しい方向に進んでいくことが大切」と述べた。
 この日会場では、寿司に合う日本酒各種やサントリーのウイスキー「響」も振る舞われた。同省食料産業局長の櫻庭英悦氏は、「日本の酒はもとよりウイスキーが、いかに寿司に合うかぜひ試してもらいたい」とし、日本国内ではアルコール飲料の消費が低迷するなか、「日本食や日本の酒の国際マーケットは広がりをみせている」と海外市場での好感触を示した。
 また同日夜には、国連総会出席のためニューヨークに滞在中の安倍首相が、各国の要人など約250人を同所に招いた夕食会で同じ寿司を振る舞い、日本食の世界進出をアピールした。

「秋なすは嫁にも食わすな」とことわざを引用しながら、来場客の関心を引いた長島氏