TAX SPECIALIST羽山 徹の税金をはじめとしたお金の話あれこれ Vol.15 国公的年金の種類: 退職年金―その①

問①:米国で受け取れる公的年金(Social Security Benefits)にはどのような種類がありますか?

解答:働いた期間中に支払った「社会保障税:Social Security Taxes」や「自営業者税:Self-employment Tax」を基に、本人が退職後に受け取る年金である「退職年金(老齢年金:Retirement Benefits)」だけでなく、配偶者や子どもも受け取れる「家族年金(Dependent Benefits)」や、「遺族年金(Survivor Benefits)」、「障害者年金(Disability Benefits)」などもあります。

問②:まず、退職年金について説明してください。何才から申請して受け取れるのですか?
解答:退職年金の正規退職年齢FRA(Full Retirement Age)は、本人の生まれた年度によって異なります。すなわち、1943〜54年までに生まれた方は全員が66才、60年以降生まれの方は(現時点では全員が)67才です。このFRAを繰り上げ/前倒して、本人が当該年金受取を申請することができます。現時点では、最大62才までの繰り上げ受給が可能です。もちろん、62才ではなく、64才からでも繰り上げして、受給を開始することができます。また逆に、FRAから繰り下げ/受取を遅らせるなどして受給開始をしても構いません。

問③:では「繰り上げの受給」や「繰り下げ受給」のメリット、デメリットなどを説明してください。
解答:「繰り上げ」のメリットは、(亡くなるまで継続支給される)年金収入を早めに受け取り始めることです。一方のデメリットは、受取額は、繰り上げる年数に応じて割引されます。例えば、FRAが66才の方が、62才まで4年間繰り上げると、FRA時に受け取れる額の25% が割引かれますし、FRAが67才の場合は、5年間の割引率は30%となります。そして、この割り引かれた額は、FRAに達した以降もそのまま継続受給となります。

問④:では、繰り上げをする場合とFRAまで待って受給開始場合とは、どちらが得なのでしょうか?
解答:損益分岐点を計算式で出しますと、FRAが66才の方も67才の方も、70歳代後半、76から78才位となります。従って、ご自分の寿命が80才を超えると考えれば、62才から受給開始するのではなく、FRAまで待たれる方が生涯受け取る年金額が多くなります。

問⑤:繰り下げ受給についてはいかがですか?
繰り下げのメリットは、FRA時に受給申請しないと、その時の年金額が、受給申請するまで毎年8%増加していく点です。但し、70才までは増加しますが、それ以降は増加しません。従って、FRAが66才の方が、70才まで4年間繰り下げた場合、70才以降受け取る額は、FRA時の額の32%アップとなります。一方のデメリットは、やはり受給開始が遅くなるので、亡くなった時点で80才半ばを超えていないと、62才から繰り上げ受給した場合に比べて、生涯受給額が少なくなる場合もあり得ます。ただし、繰り下げ年金を70才から受給開始していて、仮に80才前半で亡くなった場合、残された家族が受け取る遺族年金は、その(繰り下げたことで)増額された年金額が基本となります。


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羽山 徹
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