Vol.41 アーティスト 木梨憲武さん

 その才能はお笑いだけじゃない! アーティストとしても活動の場を広げる木梨憲武さんが、日本国内にとどまらずニューヨークで海外初個展を実現させた。〝遅咲きの新人〟として乗り込んだニューヨークでも、初日のレセプションには長蛇の列ができるなど、その人気は絶大。現在トライベッカで「木梨憲武個展 in New York」を開催中の木梨さんにインタビューした。(インタビュー日時:2015年10月29日)

 

 

木梨憲武
1980年、石橋貴明とともにお笑いコンビ「とんねるず」を結成。お笑いの枠を超え俳優、司会、歌手など幅広い分野で豊かな才能を発揮する傍ら、20年にわたりアーティストとして精力的に作品を制作している。ポップな色使いと自由で力強い線の絵画を中心に、ドローイング、立体、映像など、自身の芸能活動同様ジャンルに捕われない表現が特徴であり、2014年から始まった展覧会「木梨憲武展×20years INSPIRATION-瞬間の好奇心」は15年5月までに日本国内の美術館6館を巡回し、約33万人を動員した。10月31日〜11月11日まで、hpgrp GALLERY NEW YORKで初となる海外個展を開催中。

 

−初の海外個展おめでとうございます。

 ありがとうございます。今知り合いがたくさん来ててね。どさくさに紛れて、俺の名前を使って遊びに来ている人がいっぱいいるんだよ(笑)。ハロウィンとニューヨークマラソンの波に、俺もぶっ込んで来ました。

−近くではパレードもありますから賑やかになると思います。

 そういうときにこっちに来るのは初めてです。なんか、そういうの素敵ですね。

−ニューヨークでの個展開催の率直なご感想をお聞かせください。

 今回この話をいただいて、何となく(自分の作品を)知っている日本の方も、私のことを知らない方も、どういう風に感じるか、響くか、響かないか、追い出されるのか、ぐいぐい居残るのか。どっちにしろ楽しみで数日前に来ましたけど。1カ月くらい前からね、もうイライラしてね、もう早く行きてぇ〜ってね(笑)。ずっと待ってて、でもその間でちょうどここまでできあがってきたんだよね、うまく。(作品は)どうですか?

−意外な感じがしました。柔らかいタッチや抽象絵画など多様に描かれるんだなあと。

 いろいろ気分で日々(描きたいものが)変わるもんで。

−作品はニューヨークを意識したものですか?

 きょうインタビューで結構聞かれるんですけど、今決めたんです。〝ニューヨークを意識した作品〟です。

−(笑)。今この瞬間からですか? 分かりました。

 いくつかの作品はニューヨーク行きになるんだな、とは思ってたけどね。(作品を指して)この中身もここのあたりもニューヨークっぽいとかね。それでニューヨークを意識して、見たものを描いたのが、ここにある作品。(現地で実際に描いた作品を指して)これ、昨日描いたの。

−これは黒ペン1本で描かれたのですか?

 そうですね。(絵を描いた場所の)番地もここに描いてある。すーごいきれいな月が出てて、1時35分に、この場所の近くで描きました。工事中のマンションのこのあたりがすごいきれいで。

−これはニューヨークを意識したと言えますね。

 ニューヨークを〝見て〟描きました(笑)。

−アーティストとして今後の目標などはありますか?

 もう2年前ですけど、MoMAを貸し切って取材していただいたときは、アート漬けの1週間というか。今回イメージ的にはもうMoMAに作品が入るイメージはできています。スタンバイはできています。

−海外での個展は以前から夢でしたか?

 うーん…。

−そうでもない?

 記事的にその方が良ければ(笑)。

−いやいや(笑)。

 はい、夢でした。53歳初海外個展ということでね。

−創作活動で、行き詰まったり苦労したりすることはありますか?

 今のところ、行き詰まったりとかそういうのはないんだけど。こっち描いたから(表現的に)違うのも行き(描き)たいなとか、どういう風に形にしようかなっていうのは、意識せずに描いたりしているのかな、とは思いますね。

−こちらに飾られている大きな作品は何を見て描いたのですか?

 数年前の「リーチアウト」っていうテーマの作品で、人の手をモチーフにしたものでね。意外に今日本で出回っているものがリーチアウトの作品なんだけども。

−印象に残る作品ですね。アーティスト活動とお笑いは木梨さんにとっては同じですか?

 あんまり俺の意識の中では変わらない。自分はテレビでバラエティやったりしているのと、自分が(アーティストとして)思うことは、同じような色でやったりしている。テーマがあったり。なにかものを作っていくことに関して、表現的には一緒。このあいだはドラマの撮影もあって、来月放送の「世にも奇妙な物語」の20分のドラマを撮ってからこっちに来たんですけど。ま〜大変で、あっち撮ってからこっち撮って、つながるみたいな。

−個展の準備やドラマの撮影など、多忙だったのでは?

 そうですね。ここ来る前にすごいバタバタしてて、絵描きながらドラマ撮って、レギュラー番組の収録もあって、こっち(ニューヨークにいる時間)の分まで番組を貯め撮りして。あれ? 俺結構今忙しいんじゃない? って。

ー今回の滞在で個展以外に何か予定していることはありますか?

 「YASUDA」っていうお寿司屋さんがあって、今回そこでパーティーなんです。社長が昔からの知り合いで、15年前の立ち上げから知ってて。今回パーティーやらせてもらうんで、貸し切りにして安くしてよって言いましたけど(笑)。

ー海外でも日本食が落ち着きますよね。

 今も隣(の日本食レストラン)に行って、カツ丼とそばのセット食べて。あまりにも急に食べたら目が回りそう。

−お酒の疲れが溜まっているとか? 近くのチャイナタウンでマッサージなんかをしてみてはどうでしょう。

 それ行きたい。今取材が終わったら行きたいくらい。

−そのほか、スニーカーなど趣味のものや気になっていた店などはチェックできましたか?

 今のところ、昨日ちょこっとセレクトショップ行ったくらいで、あんまり見れてないな〜。

−スケジュール的に自由な時間が少ないのでしょうか?

 (今回に限らず)息子とかにも「どこどこに行く?」って聞いて、食いついたら、じゃあそこ行きますってことが多い(笑)。

−日常的にご自身の一存では叶わないことも多いのですね。移動も大変ですしね。

 そう。で、今回は地下鉄で移動してるんだよね。

−そうなんですか。それが一番確実な移動手段だと思います。

 タクシー乗ってると渋滞多いもんね。

−ニューヨークは人が多いですし、公共交通機関は時間が読めないので、最近は自転車が流行っていますね。

 シティ・バイクね、いいよね。(実家の)「木梨サイクル」でも考えます。親父が社長で俺長男なんで、そのへんも考えていかなきゃいけない(笑)。

−日系の自転車屋さんもすでに数件ニューヨークに来ています。

 へぇ〜。木梨サイクルはパナソニックとコラボした自転車を出します。バッテリー付いてるやつ。「乞うご期待」って書いておいてね。

−わかりました(笑)。ぜひ宣伝させていただきます。自転車は渋滞知らずで時間の節約にもなりますよね。

 世界トップの街ニューヨークで、どう渋滞をくぐり抜けていくか…一日すぐ終わっちゃうじゃないですか。どう一日を充実させて、どういう動きをして、どう行ったら動線が一番正しいのか、この街でクリアしながらがんばってください。

−最後に読者にメッセージをお願いします。

 若い人たちにはいいんですが、50歳超えてニューヨークでがんばろうって来る人はなかなかいないのかな。やっぱり(50歳過ぎた人は)西海岸とか暖かい場所を選ぶのかな。

−そうかもしれないですね。

 ニューヨークの人たちは東海岸でがんばってください。われわれはハワイで待っているってことで!