米国公的年金の種類:退職年金ーその②はwww.dailysunny.com/2015/11/04/hayama_toru1104/にて
緊急事態発生です。
前回の問⑦で、「Claim(File)and Suspend」の説明をしましたが、この手段が、11月上旬に連邦議会で成立した予算法案により、今後利用不可能となることが決定しました。ただし、現時点でこの手段を利用しているカップルは、影響を受けることはありません。特に今回の変更は、ご夫婦で受け取る米国公的年金に関するプランニングを、大幅に変更する必要がある内容となっています。
まず、「Claim(File)and Suspend」を簡単にまとめると、「Aさん(62才)とBさん(64才)のご夫婦の場合、将来お2人共、ご本人の退職年金と、『配偶者年金:相手配偶者の退職年金の50%分』の両方を受け取ることが可能です。そこでBさんが2年後の66才(正規退職年齢:FRA)になった時点で、SSA(米国年金機構)に自分の退職年金受給の申請書を提出します(Claim)。それにより、Aさん(64才)は、配偶者年金の受給申請をすることができ、直ちに受給が開始されます。一方、Bさんは受給申請と同時に受給の中断(Suspend)を申し立て、受給開始を延長させます。これにより、Bさんは自分の退職年金の受給を、70才まで繰り下げることで(FRA以降毎年8%)増額された年金を受け取ることが可能となります。」という内容の選択肢でした。
問:上の例「現時点で64才のAさん、66才(=FRA)のBさん夫妻」を使って、今回の変更点を具体的に説明してください。
解答:もう既にFRAになっているBさんは、2015年11月2日以降180日の間に、「Claim/File and Suspend」を実施することは可能です。従って、62才を超えているAさんも配偶者年金を申請受給開始することが可能です。そして、Bさんは70才まで本人退職年金を繰り上げることができます。同様に、2016年4月までに66才の誕生日を迎えるCさんも、同年4月30日までに「Claim/File and Suspend」を活用することができます。
問:もし、16年5月以降「Claim/File and Suspend」を実施してしまったら、どのようなことになるのでしょうか?
解答:Bさんが自分の年金受給を申請したあと中断(Suspend)すると、本人の年金だけではなく、配偶者Aさんが受け取る配偶者年金(基本的にはBさんの2分の1)も一緒に中断されてしまうことになります。またこの処置は、Bさんのお子さんが受け取る扶養者年金(Dependent Benefits)にも適用されますので、十分にお気を付けください。つまり、「Claim/File and Suspend」は実質的な「禁じ手」となりました。
問:この他にも変更点がありますか?
解答:ご自分の退職年金受給を遅らせ(FRAから70才までの間)、その代わり、まず相手の配偶者年金を受給申請することができるのは、ことし(2015年)中に62才になっている方のみです。つまり、来年以降62才になる(1954年以降生まれた)方は、残念ながらこの手法を利用することができなくなりました。さらに、54年以降に生まれた方が、将来年金の申請をする時点では、本人年金と配偶者年金の両方を同時に申請するとみなされ、どちらか多い額の年金のみが受給されることになります。すなわち、配偶者年金だけの受給をファイルすることはできなくなります。
Financial Advisor / Tax Specialist
羽山 徹
TEL:914- 882-2819
toruh@earthlink.net
19 W 44th St #415, New York NY 10036