自ら作詞したラップを披露し、心の葛藤を表現する「ヒップホップセラピー」は、これまでのセラピーに興味を示さなかった生徒がカウンセラーや教師に心を開く方法として、ブロンクス区内のハイスクールで次々と採用されている。2004年からこのセラピーを続けているソーシャルワーカーのトーマス・アルバレス氏は、同セラピーの非営利団体を立ち上げており、現在ではニューヨークとカリフォルニア州の20カ所以上で活動を行っている。
同区のニュービジョンズ・チャータースクールに通う9年生のとある生徒は、怒りやすい、すぐに暴力を振るう、といった精神面や言動に問題を抱えていた。通常のセラピーには全く興味を示さなかったが、いとこを亡くした際に、カウンセラーの助けを借りて自分の気持ちを詞に書き出しラップで表現したところ、感情を素直に言葉にでき、気持ちが落ち着いたという。
専門家のなかには、「ラップで自分の気持ちを表現しただけではセラピーとしては不十分で、さまざまな心の問題とどう向き合うかを学ぶ通常のセラピーと併用する必要がある」という者もおり、この新しいセラピーの採用に積極的ではない意見もある。一方で、マイノリティの生徒らには有効だとして取り入れる動きが全米に広がっている。