NY州早期介入プログラムと特別支援教育の流れ NYS Early Intervention & Special Education

 アメリカで言葉が遅い、行動が他の子どもと違うと親が感じたり、小児科医から療育を勧められた時、どのようなことが出来るだろう。
 アメリカの0歳からの早期介入プログラム(Early Intervention=以下EI)と特別支援教育への理解は、日本に比べ一般社会へ浸透しており、支援の種類も多様だ。
 EIと、公立学校における特別支援教育は収入に関係なく全て無料だ。 今必要が無くても、頭に入れておくことで後に役立つ、また他への理解が深まることもある。

写真1)NY州Early intervention ペアレントガイド

「療育」は「とりあえず」で始めてよい

 特別支援の必要な子どもをアメリカではスペシャルニーズという。日本人家庭が、日本との差を一番感じるのが「療育」に対するポジティブな姿勢だろう。
 「療育」と「診断」は別ものだ。赤ちゃんの成長過程は個人差が大きく、気になる遅れも、個人差なのか診断名がつくものなのかは、3歳過ぎまで待たねばならない。その間をどう過ごすかの答えが、0歳から3歳児対象の「EIプログラム」だ。
 とりあえず療育を始め、後に診断がつけば、その後の成長に役立ち、問題がなくても無駄にはならない。療育を受けることが、恥ずかしいこと、差別や区別に繋がるという思考はなく、逆に得になると考えるのだ。
 医師にも考え方に差があり、様子見をしているうちに、せっかくのチャンスを逃すこともある。療育を勧める医師に出会ったら、ラッキーだと思い、まずはエバリュエーション(査定)を申し込んでみよう。

スペシャルニーズでも進路は阻まれない。

 次に日本人家庭が驚くことは、スペシャルニーズの子どもが、勉強に遅れがあっても、秀でていても、必要な支援を受けながら学ぶ環境が身近に整っていることだろう。
 スペシャルニーズの子どもは、学校のテストや、ギフテッド&タレンテッドプログラム(G&T)、中・高・大学進学に必要な試験で、時間延長などの配慮が得られる。競争率の高い進学校でもスペシャルニーズの枠が設けられている。また、進度に沿った個別授業や、アドバンスクラスへの在籍も普通に行われ、スペシャルニーズの学ぶ機会を奪うことがないよう支援される。

年齢別3つのプログラム

 ニューヨーク州では年齢別に、①EIプログラム。(0歳から3歳まで)、
②CPSE(Committee on Preschool Special Education)=就学前特別支援教育委員会。(3歳から5歳まで)、
③CSE(Committee on Special Education)=特別支援教育委員会。(5歳から21歳までの公立教育K〜12年生対象)、の3つに分かれる。
 査定は保護者の同意のもとで行われる。また保護者は査定をいつでもリクエストする権利がある。 支援の必要性を認められると、保護者とミーティングが行われ、具体的な支援内容が決定する。

EIは記録が残らない

 EIは保健局の管轄となり、ビザのステータスに関係無く、誰でも受けることができる。個人情報は守秘され、学校へ記録が報告されることもない。
 EIでは専門のコーディネーターがつき、全てのプロセスを保護者と共に行い、必要なセラピーの種類、回数、時間を決める。セラピーは自宅で行われるが、希望すれば、公園、医療施設、デイケアなどで受けることも可能だ。内容は遊びに近く、多ければ毎日セラピストが訪問して子どもの相手をするため、親にとっても学びと息抜きの機会となる。

CPSE/CSEと教育局発行のIEP

 CPSE/CSEの管轄は教育局になり、支援情報は学校と共有される。家庭、学校、行政の三つ巴で子どもを見守り、支援してゆくためだ。
 CPSE/CSEでは、保護者を含めた支援チームとのミーティングで、生徒個人にカスタマイズされた、支援内容と個人の特性に合ったゴールを定めたIEP
(Individualized Education Program)が作成される。内容は毎年更新され、学校側
はIEPに記載されている支援を生徒に提供することが義務づけられている。IEPはスペシャルニーズを持つ生徒にとり、支援を受ける権利を守る大事なものだ。

CPSE/CPEの学校探しと「ターニング5」

 CPSEはプレスクールに通学しての支援教育であるため、親は子供の特性にあった学校探しが必要になる。CPSEからはコーディネーターはつかないが、EIから継続する場合は、EIのコーディネーターがそのプロセスも手助けしてくれる。
 CSEからは公立キンダー入学となる。スペシャルニーズだけの学校、生徒の特性にあったプログラム、普通クラ
ス、少人数クラス(Self-contained)、一般生徒とスペシャルニーズが半数ずつ在籍するICT (Integrated Co-teaching)クラス、 G&Tやハンター受験(ニュヨーク市立大学管轄の実験校)など、選択肢はさらに広がり複雑になる。この時期は「ターニング5」と呼ばれ、教育局や非営利団体などが、セミナーやスクールフェアを開催して情報発信をしている。

日本語学校や私立学校へ進みたい場合

 基本的に、日本語学校を含め、私立校の生徒は公費支援の対象から外れIEPも作成されない。部分的、あるいは全額公費の援助を受けることも可能だが、別途プロセスが必要になる。
 例えば、行政は全てのスペシャルニーズを支援する義務があるため、保護者が「公立校で自分の子供のニーズに応える支援教育が存在しない」という訴えを起こし、その理由が正当と認められた場合には、公費の援助を得て私立校に通学するなど、ケース・バイ・ケースといえる。

日本人保護者のサポートグループ

 ニューヨーク州EIの日本語パンフレットは(表1)のリンクの応募用紙で請求できる。また日本人保護者による支援グループ(表1)では、経験談、情報発信、交流と啓蒙に努めている。興味があれば問い合わせてみよう。(文=河原その子)

日本語サポートグループ「NYこどもサポート」HP

日本語サポートグループ 「Apple Time」HP

ニューヨーク日本人保護者サポートグループ
NYこどもサポート http://www.kodomosupport.com
Apple Time http://appletimeny.org

ニューヨーク州リンク
EI日本語ガイド請求(最終ページ) http://www.health.ny.gov/forms/order_forms/eip_publications.pdf
NY州スペシャルエデュケーション http://www.p12.nysed.gov/specialed/

ニューヨーク市リンク
NY市早期介入プログラム http://www1.nyc.gov/site/doh/health/health-topics/early-intervention.page
NY市スペシャルエデュケーション http://schools.nyc.gov/Academics/SpecialEducation/default.htm

民間サイト (他に多数あり)*SE=スペシャルエデュケーション
insideschools.org (SEタブ) http://insideschools.org/special-education
Understood.org (私立校SEガイド) https://www.understood.org/en/school-learning/choosing-starting-school/finding-right-school/6-things-to-know-about-private-schools-and-special-education