TAX SPECIALIST羽山 徹の税金をはじめとしたお金の話あれこれ Vol.19 日本の医療保険とオバマケア・ペナルティ(SRP)の関連性

問:いわゆる「米国版国民皆保険」を目指すオバマケア(Affordable Care Act「米国医療保険改革法」)は、基準を満たした医療保険に加入していないと、未加入に対するペナルティ(Shared Responsibility Payment: SRP)を科しています。

まず、このペナルティはどのようにして支払うのでしょうか?
解答:ペナルティ(SRP)は、毎年の確定申告書で支払います。つまり、2015年度の確定申告書(2015 Form 1040)で説明しますと、課税対象所得額から計算された所得税額(Line 47)から、「Non Refundable」税額控除総額(Line 55)を差し引いた所得税(Line 56)に、このSRP(Line 61: Health care: individual responsibility)を含むOther Taxを加算した金額が、15年度の確定税額(Line 63: total tax)となります。

問:このペナルティは、15年度はどのくらいの金額になるのですか? 毎年増加すると聞いています。
解答:16年以降は毎年、インフレ率を考慮して増加していくことになっています。ちなみに15年度の基本額は、未加入一人当たり325ドル(世帯当たり最高3人分まで)または、申告書上の「Filing threshold」を超える所得の2・0%、どちらか大きいほうの金額となっています。

問:この「Filing threshold」とは?
解答:標準控除額「Standard Deduction」と人的控除額「Personal Exemption 」の合計額を示します。従って、65歳未満の独身者の場合は、6300ドル+4000ドル=1万300ドルです。一方、ともに65歳未満の夫婦合算の場合は、1万2600ドル+8000ドル=2万600ドルとなります。

問:日本の国民保険に加入していると、このペナルティを払わなくてもよい、との話を聞いたことがあるのですが。
解答:日本国総領事館によると、「米国医療保険制度改革法に定められたペナルティ(SRP)が免除される日本の医療保険は、以下の通りです。すなわち、健康保険組合、共済組合または全国健康保険協会によって運営されている医療保険です。これらの保険に加入している方は、米国の医療保険に加入していなくても、当該ペナルティを回避することができる」とのことです。具体的には、健康保険組合(健保組合)が運営する健康保険制度(=保険証の発行者は健康保険組合)、日本厚生労働(厚労)省所管の特別法人、全国健康保険協会(協会けんぽ)が運営する(=保険証の発行者は協会けんぽ)健康保険制度に基づく医療保険などが該当します。

問:では、一般的な「国民健康保険」に加入していても同じようにペナルティが免除されるのですね。
解答:残念ですが、答えはノーです。日本国総領事館によれば、「一方、国民健康保険制度および後期高齢者医療制度に基づいた健康保険」、つまり市区町村が運営する健康保険制度(=保険証の発行者は市区町村)で「国保」と呼ばれる医療保険への加入は、SRP免除の対象とはならず、ペナルティの対象となります。これは日本政府から米国政府への問い合わせに対する正式回答とのこと。

問:実際、日本に一時帰国中に発生する医療負担を軽減するために、市区町村から住民票を(新たに)取得すると同時に、医療保険に加入し、健康保険証を所持している方がいると聞きます。
解答:この健康保険証は、市区町村が発行者となる保険証ですので、上記「国民健康保険」に該当します。従いまして、一年間この医療保険の掛金を払い続けても、米国確定申告書上、SRPの支払い免除の掛金支払とは認められません。現在、国民健康保険にだけ加入している方の、早めの米国医療保険への加入をお勧めします。

問:海外旅行者医療傷害保険は、SRP免除の対象でしょうか。
解答:SRP支払いの免除とはなりません。確かにこの保険で多くの医療費はカバーされますが、SRPを回避したい場合には、米国医療保険に新規加入する必要があります。この場合、二重の掛け金負担となりますので、どちらかを選ぶ判断を下す必要があります。


Financial Advisor / Tax Specialist
羽山 徹
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