海老蔵さんイベント、隈取も披露 ジャパン・ソサエティー

 マンハッタン区のジャパン・ソサエ
ティーで2月29日、トークプログラム「歌舞伎界のプリンス・市川海老蔵」が開催された。
 ニューヨーク市立大学ブルックリン校・同大学院名誉教授で歌舞伎研究者のサミュエル・ライター氏が司会を務め、歌舞伎界のプリンスこと市川海老蔵さんと、歌舞伎囃子方の田中傳次郎さんがそれぞれのキャリアと歌舞伎や能の伝統について語った。
 歌舞伎の未来への具体的な取り組みとして市川さんは、「(仮名手本)忠臣蔵や(義経)千本桜なども大切だが、歌舞伎十八番や新歌舞伎十八番など、成田屋の(お家芸である)演目をしっかりとやっていきたい」と述べた。また田中さんは、歌舞伎を支える役割としてどのような仕事をするのかとの質問に、「指揮者がいないので、観客の反応や役者のくせを見ながら演奏する」と答え、囃子方の仕事の難しさを明かした。
 歌舞伎の舞台化粧「隈取」のデモンストレーションでは、市川さんが色使いや線の意味、難しい点などを解説しながら、父團十郎さんの弟子・新十郎さんが実際に隈取を取って見せた。完成した「筋隈」で新十郎さんが〝にらみ〟をきかせると、満席の会場からは大きな拍手が沸き起こり、大いに盛り上がった。
 また、「市川海老蔵 グランド・ジャパン・シアター」について、どのような経緯で実現したのかという観客からの質問に市川さんは、「本来能や歌舞伎は深く交流してはいけないもの」としながら、「ここまでの一流メンバーが揃うことは日本でもない。ニューヨークで一夜だけの豪華なものにしたかった」との思いを語った。

イベント後の記者会見で「(能楽者や狂言師を含め)いろいろな方から学びながらご一緒させていただいた結果、ニューヨークで公演できることになった」と語る市川さん(photo: Daily Sun)