2011年、フェリス・コーエンさんが公開したニューヨーク市内の狭~い自宅は、〝マイクロ・リビング〟として紹介され話題となった。
コロンバス街70丁目のアパートと立地は抜群だが、90スクエアフィート(約8・4平方メートル)という狭さの室内には、冷蔵庫や机、棚、収納ケースがコンパクトに置かれ、寝床は天井との距離が近いロフトだった。〝靴箱の生活〟などと形容されたその部屋に対し、こんなところに人が住むのかと、さまざまな論議が飛び交った。
しかしコーエンさんはその後、なんと同じエリアに490スクエアフィート(約46平方メートル)のアパートを約30万ドル(約3400万円)で購入した。彼女はこのほど、アパート購入までの〝小さな生活〟から得た経験をまとめた電子本をリリースする。そのタイトルは、「90スクエアフィート(かそれ以上)の〝大きな生活〟のための90のレッスン」。コーエンさんはニューヨーク・ポストの取材に、「狭い空間の中での暮らしは、私の人生を大きくしたわ。私の本は、どんな大きさの部屋を選んだとしても、好きな生活を送ることについて書いているの」と答えている。
月700ドルの家賃で、まるでクローゼット並みの大きさの部屋。この特殊な住処が彼女の人生を変えたのだ。「物にお金を使いたくないということに気づいたのと同時に、捨てることに時間を惜しみたくない」。彼女が得たものは何事も〝少ない〟生活を楽しむことである。書籍のあらすじによると、「この本が発信するメッセージは、散らかったものを取り除いて必要なものにフォーカスすること」だという。そう、まるで片付けコンサルタント近藤麻理恵さんの著書、「人生がときめく片付けの魔法」のニューヨーク版ではないか。
高騰する家賃や生活費に対し、不十分な賃金。ニューヨークに住むことを諦める人もいる。それでもここに住み続ける。ニューヨーカーが体験したリアルな生活から、何かヒントが得られそうだ。