第一回 ゲスト:和食のプロ「吉本安通志(あつし)」さん
今回からリニューアルした焼酎ソムリエ大竹彩子による焼酎コラムは、焼酎好きで有名な各業界の「プロ」たちに焼酎と言ったら「この一本!」を選んでいただき、さらに焼酎にまつわるエピソードをインタビュー形式で語っていただきます。焼酎のプロと各業界のプロの焼酎トーク、お楽しみください。
―さて、本日は味に定評のあるニューヨークの高級和食店で有名な「炙り屋錦之助」の料理長、吉本安通志さんをお迎えしました。早速ですが、ズバリ吉本さんが選ぶ「この一本」を教えてください。
吉本: やっぱり麦焼酎「兼八」でしょう。
―それはなぜですか。
吉本: 出会いは5年ほど前、東京で勤務していたお店(てしごとや)に兼八があって仕事後に飲んだのがきっかけ。元々芋派の私はそれまでどの麦を飲んでも美味しいと思ったことがなかったけど、兼八は違った。麦で心から美味しいと思ったのは初めてでした。兼八の辛口で独特の香ばしさは、焼魚やよく焼いた鶏肉など、焼き物にとても合う。脂の乗った秋刀魚なんて最高!味噌焼きもイケる、味噌もつ煮とかもいいね。今では個人買いをしていて、家に兼八の一升瓶が何本もあります。1本一週間と持たないけど(笑)。
―わかります、ビターな麦茶や麦チョコを想像させるお味は、馴染みがあってどこか懐かしさを感じますよね。吉本さんはどんな時に焼酎を飲みたくなりますか?
吉本: 仲間内でゆっくり飲む時。焼酎は飽きないからゆっくりと時間をかけて飲めるのがいい。
―沖縄出身と伺ったのですが、沖縄の人も泡盛以外の焼酎は飲むんですか?
吉本: 沖縄の人は基本泡盛しか飲まない(笑)。しかも水割りで。本土の人はクースー(泡盛の古酒)が好きですが、私たちがクースーを飲むのはお祝いとか特別な時。沖縄には大切な儀式があって、一家に息子が産まれると甕を庭の土に埋めて、そこにできたばかりの泡盛を入れて13年寝かすんです。沖縄では13歳が成人。その成人のお祝いで初めて、庭に埋めていた甕を出してそれをみんなで飲むんです。
―お酒にまつわる素敵な伝統をお持ちなんですね!しかもまさに自家製の熟成が加わってとても美味しそう!
吉本: 私は焼酎も好きだから沖縄でも黒霧島とか飲んでたけどね(笑)。
−それでは最後に、和食の「プロ」吉本さんにとって一言で表すと、焼酎とは?
吉本: 「みんなと仲良くなれるお酒」ですかね。
―ありがとうございました。
麦焼酎「兼八」■四ツ谷酒造有限会社(大分県) ■原材料:はだか麦・はだか麦麹 1919年創業以来、代々受け継がれた伝統の技で造られた伝統の味
次回は、吉本さんからご紹介いただいた“教育のプロ”である帰国子女向け理系インターネット塾Vartex Educationsの校長、船橋侑子(ふなはしゆうこ)さんに焼酎のお話をお伺いします。
大竹彩子
東京都出身。2006年、米国留学のため1年間ミネソタ州に滞在。07年にニューヨークに移り、焼酎バー八ちゃんに勤務。13年10月に自身の店「焼酎&タパス 彩」をオープン。焼酎利酒師の資格をもつ。
焼酎&タパス 彩
247 E 50th St (bet 2nd & 3rd Ave)
212-715-0770 www.aya-nyc.com