ファッションライターあやこんぶの“おしゃクロ!” Vol.18 ドラァグ・クイーン用のブーツが傾いた工場を救う ブロードウェー・ミュージカル「キンキー・ブーツ」

 2013年にはトニー賞最優秀作品賞をはじめ6部門を受賞した「キンキー・ブーツ」が、4月3日に行われた英国演劇界で最も権威のあるオリビエ賞授賞式で、最優秀新作ミュージカル賞を含む3部門を受賞したことが発表されました。そして日本では、東京・大阪公演として日本人キャストによる日本版が7月より、そしてブロードウェーのキャストによる来日版が10月より開演することが発表されています。私自身もずっと観たいと思っていた話題作だけに、満を持して観に行ったところ、最初から最後まで観るものを飽きさせない展開で、数々の栄冠に輝いているのも納得!
ここにその感動をレポートします。

Alan Mingo ©Matthew Murphy


 ストーリーは05年に公開された英国発のコメディー映画「キンキー・ブーツ」を元にしたもの。舞台はノーザンプトンで、代々続く紳士靴工場を営む父を亡くし、閉鎖寸前の工場の経営に奮闘するチャーリーと、幼いころ父からボクシングのトレーニングを受けていたドラァグ・クイーンのローラの出会いから始まります。ローラはドラァグ・クイーンに向けた女物の紳士靴、「キンキー・ブーツ」のアイデアにより、工場を再生させた救世主となります。このミュージカルの目玉のひとつは、楽曲をシンディ・ローパーが担当していること。ポップ・ミュージックの女王の作る曲は、耳に残るキャッチーなサウンドで、シーンをドラマチックに盛り上げます。団体組織の中で働く人々の人間関係、複雑な親子愛、固定観念や偏見、心の葛藤など、自分の状況にも当てはめられるようなシチュエーションが彩り豊かに描かれます。ミュージカルに込められたメッセージは、差別を一切なくそうという難しい課題ではなく、お互いの違いを認め合い共存していこう、という等身大のもの。そして何より、エンジェルと呼ばれるドラァグ・クイーンたちのダイナミックなダンスは迫力満点で、女性以上に筋肉質で長い脚を豪快に上げ踊る姿には圧倒されるでしょう。とくにランウェイをエンジェルたちが闊歩するシーン、ベルトコンベヤーを使ったダンスシーンは圧巻です。

Andy Kelso, Wayne Brady, and Jeanna de Waal (center) ©Matthew Murphy


 ミュージカルは立案から完成までに6年がかかるといいます。インターネットで何でも見られるようになった今だからこそ、ニューヨーク周辺に住んでいるなら、このシアター・ディストリクトに来ないと体験できないライブで味わえる感動を定期的に噛み締めてみてください。

www.kinkybootsthemusical.com


フリー・ジャーナリスト
Aya Komboo
www.ayakomboo.com
日本では数々の出版社で経験を積み、フリーランスへ転身。2006年よりロサンゼルスへ渡米し、現在はニューヨークを拠点にファッション/カルチャー誌などで活躍している。