余るチーズ も〜っと食べてよ、USA

 居酒屋などで、「チーズ大好き〜」と言う女子は多い。彼女らを女子と呼べるか、それは妙齢ではないのか、あるいは熟女ではないのか、ということが議題ではない。チーズの方である。「みんなで鍋やろうよ! 何鍋にする?」となったとき、「チーズフォンデュ!」などと言う女子(まあ男性もいると思うが)には、米国は「チーズ-Visa」なるものを発行することを本格的に考えるべきではないか、と入国管理局か移民局に提案したいような事態が、米国を悩ませているというのだ。「チーズは米国で余りに余っており、米国人は年間にもう3パウンド(約1.3キロ)は食べてほしい」というのである。

「私らの苦労も知ってくれ…」

 端的に言えば、圧倒的なチーズの供給過多ということだ。ハードまたはソフトチーズに分類されるパルメザン、ゴーダ、クリームチーズなどは、ある程度の保存が効くからまだしも、フレッシュチーズにカテゴライズされるカッテージ、モッツァレラ、フェタ、リコッタチーズなどは長く貯蔵できないので、じゃんじゃん捨てられているという。ハードチーズも、冷蔵庫や冷凍庫で、相当数が出番を待っているらしい。その出番があることを切に願うばかりだ。米政府は、願ってばかりもいられないので、「もっと食べよう、チーズ!」と呼び掛けているわけである。その需要と供給のバランスを取るのに、出た数字が3パウンドというわけだ。既に米国人は年間に36パウンド(約16.3キロ)のチーズを消費しているにもかかわらず。
 今年度、米国が世に送り出した牛乳は、2兆1240パウンド(約9億6343トン)。もはや、どれくらいの量なのか想像もつかないが、この数字が歴史的に最も多いものだったことは確かだ。それに伴い、チーズの方も、これまでの記録をやぶる11億9千万パウンド(約54万トン)が生産されている。本当の問題は、酪農業者が生産量をこれほどまでに増やしているのは、「市場、ひいては消費者からの要望がある」からであり、かつ、「市場に多く出回れば、安い値段で手に入れることができる」という“マーケットの法則”に消費者は安心感を覚えるからだ。
 この世にはびこる強欲な人間たちを満足させるために、日々大量生産される食料品。その裏側で、動物や自然が強いられる闇を、この国の巨大なスーパーマーケットは教えてくれない。(ヤマダエビス)

米国は、乳製品の種類が多いことで知られている