米国の贈与税のルールを活用した大学学費積立口座(529 College Saving Plan)①
問1:前回に続き、贈与税に密接に関連している529 College Saving Planについて説明してください。
解答:一般には、父親または母親が口座の所有者(Owner)として積み立てをします。そして、大学に行く予定の子どもが口座の受取人(Beneficiary)となり、授業料など大学にかかる費用を、口座残高に応じて、所有者から大学に支払ってもらいます。その際、「父親と息子」、「父親と娘」、「母親と息子」、「母親と娘」の組み合わせで必要に応じて、それぞれ529 College Saving Planを開設します。
問2:所有者になれるのは、両親だけですか?
解答:祖父母でも可能です。
問3:例えば、贈与者が父親で、受贈者が娘となり、年間最大1万4千ドルまで(2016年度)当該口座に贈与者である父親が贈与税を払うことなく積み立てをすることができる、ということですね。
解答:その通りです。さらに母親も同じ娘のために当該口座を開設し、自分が所有者で娘が受取人である口座に年間最大1万4千ドルまで、贈与税を払うことなく積み立てができます。つまり、娘が大学に進学するために、16年度は、両親合わせて最高2万8千ドルまで、贈与税を払うことなく積み立てることができます。
問4:まとまった現金を当該口座への積み立てに活用できますか?
解答:向こう5年分を一括して口座に積み立てることが認めれています。つまり、1万4千ドルの5年分=7万ドルを、16年度中に一度に積み立てることが可能です。もし、来年度以降も暦年贈与額が1万4千ドルのままであれば、2017〜20年までは追加の積み立てはできません。16年度に5年分を一括で積み立てた場合、必ず贈与税の申告書、2016 Form 709(US Gift Tax Return)の「Schedule AのB欄」をチェックして、IRSに提出して下さい。なお、口座残高の最高額が定められていて、30万ドルを超えると、それ以降積み立てができなくなります。
問5:税務上の利点はあるのですか?
解答:529 College Saving Plan口座は、大手投資信託会社が口座を管理運用しています。積立額(贈与額)は、分散された投資信託で運用されます。従って、投資信託の運用実績として、利子、配当金、売却益などの運用益が生じます。この運用益は基本的には、口座から引き出すまで課税されない、という繰延課税(Deferred Tax)が適用されます。積立額は引き出す際、課税の対象とはなりません。
問6:所有者である父親がこの口座から大学に授業料の支払いをする際、それまで課税されてこなかった運用益は、通常所得として課税されるのですか?
解答:口座から引き出された運用益が、授業料や寮費など適格教育費(Qualified Educational Expenses: QEE)の支払いに充てられる場合、その運用益は非課税扱いを受けます。しかし、QEE以外の支払に充てられると、課税対象の所得となるのはもちろん、10%のペナルティも科せられます。口座が一般投資目的に利用されるのを避けるためです。
問7:もし、息子や娘(Beneficiary)が最終的に大学に行かなくなったら?
解答:この場合注意が必要です。まず、口座のBeneficiaryは変更可能なので、本人にもしきょうだいがいれば、彼らに変更し、新たな組み合わせの529 Planとして、それまでの口座残高に新たに積み立てを加えていくことができます。Beneficiaryの変更は「First cousin」まで可能となっています。(続く)
Financial Advisor / Tax Specialist
羽山 徹
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