ニューヨークの神様 作:山田恵比寿 第5話 ときめきのニューヨーク

 急に秋めいてきた9月のある日、シンガポールに駐在している友達の雪乃ちゃんから、NYへ行くので会いたいという連絡が来た。
 会えるよ、と返事して、どこへ行こうか、と急に日々の生活に楽しみが出てきた。どこへ行きたい?とLINEで聞くと、NYらしさを感じられるところ、とNYを訪れる多くの人が言う、困った答えが返ってきた。うーん、どこもNYらしいんだけどなぁ。

ニューヨークらしさを何に感じるかは、人それぞれだから。

 ウイリアムズバーグのL線ベットフォード駅で待ち合わせた彼女は長い髪をばっさり切っていたせいか、NYで会うのは初めてのせいか、以前の印象とは違って、すごくサッパリしていた。
「実華子ちゃんとNYで会うのなんて変な感じ! でも、嬉しい。ありがとう」
ストレートにお礼を言われて、なんだか照れたけれど、嬉しかったし、言葉に出すって偉いなと思った。
 NYならではの料理を楽しみ、マンハッタンの絶景が拝めるバーで、ワインを口にするころには、私はすっかり上機嫌になっていた。
「こんなカッコいい街に住めるなんて、ホントにうらやましい」。私がカッコいいわけじゃないが、嬉しかった。
「雪乃ちゃんも、シンガポールいいじゃない」「最初は良かったけど、飽きたー!」と笑った。
久々に会う友人との居心地の良さに、実華子は新たな発見をしていた。
NYに住むことの幸福、そして、別れの後に開いた穴を埋めるような出会いもあるということ。
「あ、そうだ。私の元先輩もNYにいるらしいの。明日もディナーしない?」
私はすぐにうなずいた。
 次の日、雪乃ちゃんが指定した場所は、ユニオンスクエアの喧騒から離れたアービングプレイスにある店だった。小さな店だが、センスが感じられる店だ。
 店の入口には、これまたセンスのいいスーツを着た白人の男性が立っていた。お互い、雪乃ちゃんの??と思いながら、声をかけられずにいると、雪乃ちゃんがごめーんと走ってくるのが見えた。決して、日本人には出せない真っ白で綺麗な歯を見せながら、笑顔でマイケルです、とその人は自己紹介した。
 この店は、マイケルさんが選んだのだという。ミシュランの星をとっていて、サービスも味もびっくりするぐらい上質だった。私は、マイケルさんの上品さにも、くらくらしていた。
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©Eden, Janine and Jim

©Eden, Janine and Jim


マイケルと出会った店
カサ・モノ
Irving Place & E17th St.