9月30日付のエーエム・ニューヨークによると、同日、パブロ・ピカソの名画「役者」の元所有者が、メトロポリタン美術館(MET)を相手取り損害賠償を求める訴訟を起こしたことが分かった。
1938年、当時所有者だったユダヤ系実業家のポール・レフマン氏は、ナチスドイツの迫害を避けるためイタリアに逃げていた。しかし、イタリアでも同様の迫害が始まり、スイスに逃げる資金を作るため、この絵を美術商に1万2千ドルという安値で売却せざるを得なかったという。
1904年の作品で、ピカソが愛人のフェルナンデ・オリヴィエと幸福なときを過ごした「ばら色の時代」の代表的な肖像画。METは1952年に寄贈を受けたが、訴訟によると、その際に出どころについての調査を怠り、2011年になって同氏が所有者であったことを認めたものの、返還の話し合いは棚上げ状態だった。同氏の親族や遺産管理人などは、時価に当たる1億ドル(約103億円)以上の損害賠償を請求している。
これに対しMETは、同氏はパリで絵を正当な値段で売却しており、迫害の恐れから不当な安値での売却を強いられたとは言えないと反論。正当な所有権があるとして抗弁する意向だという。