日本を代表するビジュアル系ロックバンド、X JAPANの軌跡をたどったドキュメンタリー映画、「WE ARE X!」(スティーヴン・キジャック監督)が、10月21日から米国で公開される。撮影の舞台裏について、さらに来年1月に決定したピアニストとしてのカーネギーホールコンサートについて、リーダーのYOSHIKIが語る。(インタビュー日時:2016年9月20日)
Profile:YOSHIKI
ロックバンドX JAPANのドラマー/ピアニスト。ゴールデングローブ賞の公式テーマソングを手掛けるなど、世界を舞台に活躍。2014年にはX JAPANとしてニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン公演を成功させた。17年1月にはカーネギーホール公演(ソロ)、3月にはロンドンのウェンブリーアリーナでの公演(X JAPAN)を控えている。
「奇跡」。その言葉しか浮かばない
―映画を観て、素直に心を動かされました。X JAPANは「特別な存在」だということが伝わる作品でした。
こんなにドラマが起こるバンドってほかにないんじゃないかな。メンバーの死というのは多分一生消えない傷だけど、痛みがあることでいつまでも塞ぎ込むのではなく、その痛みを前向きなエネルギーに変えられないかと、今がむしゃらに頑張っています。そういう希望を与えられるような映画になっているんじゃないかと思います。
―メンバーの死やバンドの解散など、過去を思い返す辛い作業を引き受けたのは監督への信頼があったから?
そうですね。僕は最初、「痛みや悲しみのドアを開けたくない」の一点張りでした。でも、これは伝えるべきストーリーなんだと説明を受けて、そこから気持ちが変わりました。ドアを開けるならもう全開に、と。
―監督は撮影中、「(心のドアを)開け続けて」と語り掛けていたそうですね。
正直、最初の方は躊躇していたんです。インタビューでも本心を喋れなくて。
―そうでしたか。映画の中での涙がすごく印象的でした。
(言葉を詰まらせ)…そうですね。
―1年以上にわたる密着取材の中で、監督をどのようにご覧になっていましたか?
「このシーンってどうなるんだろう?」と言っても、彼は絶対の自信を持っている。必ずしも僕自身が好きなシーンだけではないんですけど、彼には素晴らしいセンスがある。X JAPANのことを知らない、まっさらなところから入ってくれたのが良かったですね。
―Toshiさんとの仲の良さもよく表れていた気がします。
幼稚園からの仲ですからね。日本を代表するボーカリストが近所に住んでいたなんて、運命だと思います。
―今のX JAPANをどのように表現しますか?
「奇跡」ですね。バンドが再結成するなんて夢にも思わなかった。Toshiとは、いつか死ぬ前にどこかでもう1度会うかな、くらいにしか思っていなかった。だから全部ひっくるめて奇跡。その言葉しか浮かばないですね。
―映画でその奇跡を感じることができると思います。次に、カーネギーホールでの公演について。2デイズとはすごいですね。
ニューヨークのイベントで発表したときに皆さんの反応がすごかったので、事の重大さに気付いたというか。クールなイメージのニューヨークの人たちが素直に驚いてくれて、少しプレッシャーです(笑)。
―世界中の人々から注目されていますね。
本当に幸せ者です。こうやって海外で活動できているのも、解散していた間もずっと応援してくれていたファンの人たちのおかげです。みんなに与えられた第二の人生なんです。
―第二の人生とは?
X JAPANの解散で、僕の人生は1度終わっていたんです。だけど周りの人たちからあふれる愛をいただいて再結成できて。カーネギーで演奏できることも夢のようです。
―東京フィルハーモニー交響楽団との共演も話題ですね。
新曲も考えているし、歴史的な日にできるのではと思います。昨日カーネギーのステージを歩いて、その足音が響くだけでドキドキしました。
―映画を見た後に、クラシックにアレンジされたX JAPANの曲を聴くのも楽しみです。
そうですね。クラシックもX JAPANの曲も含めて、僕の人生のサウンドトラックだったと思うんです。その集大成をカーネギーで表現して、皆さんの人生にとってのサウンドトラックにもなれたら、うれしいです。