急に寒くなって、周りが指し示すかのように風邪をひいたり、明らかなインディアンサマーという温かい日が続いたりした10月のある日、マイケルさんと、ごはんの約束をした日がきた。
雪乃ちゃんが働くコンサルティング会社に勤めてシンガポールに住んでいるけれど、ニューヨークで働きたくて転職活動をするということだった。マイケルさんは、コンサルとかしているからか、とにかくマメな人だ。会うことになって、どこに住んでる、学校は何時まで、どんな雰囲気のところに行きたい、何食べたい、嫌いな食べ物とアレルギーは?など、尋問かというほど、いろいろなことを聞いてきた。まるで病院で、初診のカルテを埋めるみたい。えーと、私ってどういう人間だったっけ。改めて考えてみると、スッと答えが出てこない。
人は意外に、自分で自分のことが分からないものだ。
とにかく質問攻めだったけれど、それも決して押し付けがましくなく、有り難かったのだが、自分について再検査するのは何だか面倒だとも思った。私はそんなに詳しくないのでお任せします、と返答すると、「No Problem」と返事が来た。そして、前日には、明日と時間は大丈夫かとフォローの連絡が丁寧にきていて、大丈夫だと伝えると、「よかった」という言葉とともに、6時半にオーチャードとキャナルの角で。最寄り駅はココだよ、とグーグル先生よりも早く、教えてくれた。
時間通りにマイケルさんは来ていて、待ち合わせ場所からすぐの「バー・ベリー」へ入った。あの“徹底ぶり”は性格のようで、食事が始まっても、それは変わらなかった。何飲みたい、何食べたい、お腹どれくらいすいてる? 私は自分の望むことを聞かれ、望み通りにしてくれる心地良さに、酒が入る前から既に酔っていた。
アペタイザーや食事が一通り終わると、楽器を持った人たちがやってきて、店の真ん中を陣取り始めた。
「ジャズの生演奏が聞けるんだよ」
そして、カウチタイプの席に座っている私たちは、とても近くに座っている。ジャズとワインを楽しみながら、マイケルさんと、膝と膝が触れ合っていることに気付いた。
「ジャズ、好き?」「興味はあるけど、全然詳しくない。楽器が全くダメだから、すごいと思う」「楽器ひけない?」と大笑いして、「君はカワイイね」と言った。
マイケルさんのまつ毛は、ものすごく長い。
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マイケルとデートした店
バー・ベリー
Orchard St.bet Canal & Hester St.