しっかりと寒さが厳しくなってきた2月のある日、ニューヨークではファッションウィークが始まっていた。2月のあたまにはメンズもあるけれど、やっぱり世界4大ファッションウィークのトップバッターを飾るウィメンズの方が注目されていて、なんだか街の様子も華やかになったような気さえする。
行ってみたいな、と願っていたら、夢というのは突然叶うようだ。ファッション業界で働くタカコさんが、「アジア・ファッションっていうのがあって、東京のバンタンの学生がランウェイショーするんだって。行かない?」と声をかけてくれたのだ。
「席とか良くないかもしれないけどいい?」「立ち見でもいいです!! 入れるだけでうれしいです!」
私はアートスクールに通っているものの、英語を勉強したいものの、じゃあ学校を卒業したり、NYを離れる時がきて日本に帰るとしたら、何をしたいのだろうか。今はこっちで一生懸命何とか生きていて、日々の生活をこなすことでいっぱいいっぱいだけれど、5年後ぐらいの近い将来をちゃんと見据えなくてはいけない。そういうことを決めたり、考えたりすべき時期にきているのだと感じた。
朝9時から始まるというファッションショーのため、地下鉄1番線のハドソンアベニュー駅を降りて、もっと西へ歩くと、すごく冷たい風が吹き付けてきた。会場の前にはまばらであるけれど、パパラッチのようなカメラを持った人が何人かいて、薄い春夏の洋服や素足にヒールをはいたモデル風の人が撮影されていた。この寒さであの格好! 撮影用なのかもしれないが、冬なら自動的にヒートテックを着ることを考えてしまう自分とは気合いが違うなと思って反省した。
待ち合わせたタカコさんと中へ入っていくと、ちょっと想像とは違ったショー会場が連なっていた。でも、とてもおしゃれな人たちがセルフィーを撮ったり、イベント会場に並んでいたり、熱気が伝わってきた。タカコさんが知り 合いと思われるファッションのPRやエディターの人たちに挨拶しているのを見て、思った。
私も、この世界の
住人になりたい。
今日、私はこのことに気づくためにここに来たのだ、きっと。時間がきてライトが落ち、音楽がクラブのように響き、照らされたランウェイをモデルたちが通り過ぎていく。これを作っているのも学生。私も学生。負けない。私だって、NYできっと自分の思う“何者か”になってみせる。
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